キンドルで売れまくる「電子エロ本」の落とし穴
ポルノ業界の裏側を描いた映画『ブギーナイツ』や、ポルノ画像のネット配信を手がけたビジネスマンが主人公の『ミドル・メン』を見た人にとっては、この組み合わせは想定の範囲内だろう。活版印刷や映画からケーブルテレビ、VHS、DVD、インターネット、携帯電話まで新たなコミュニケーション手段が爆発的に普及する際には常に、ポルノコンテンツの急増か、少なくともポルノ業界の参加という後押しがある(最大の例外はラジオだろう)。
ポルノと電子書籍端末の組み合わせには、他にも注目すべき側面がある。映像ではなく言葉を使った男性向けポルノはニッチな市場だが、電子書籍端末の普及によって、これまで表に出なかった潜在的需要が喚起されるかもしれない。また、かつてネットの登場が書店でエロ本を買う気恥ずかしさを解消してくれたように、今度は電子書籍リーダーが、配偶者や家族にエロ本を発見される心配を消してくれる。
アマゾンを待ち受ける保守派の抵抗
もう一つ、アマゾンが電子ポルノと同一視されて平気でいられるかという問題もある。キンドルによって、アマゾンはエロ本の単なる販売者ではなくなり、販売促進者かつ製造者になる。ポルノ系電子ブックの多くは、アマゾンが出版している。他社の電子書籍も「アマゾン・デジタル・サービス」が販売代理店となっており、売り上げのかなりの割合がアマゾンの懐に入る。
アダルト関連のコンテンツを厳密に検閲するアップル社に批判的な人は、アマゾンのオープンさを歓迎するかもしれない。また、エロ小説を無料配布するという集客戦略は、キンドルの売り上げを伸ばす効果的な方法なのかもしれない。
だが、格安な電子ポルノを普及させる道を追求し続ければ、いずれキリスト教団体や保守派の抵抗に合うはずだ。そのとき、アマゾンは決断を迫られる。電子ポルノの無料配布によってキンドルの販売を促進することを優先させるのか、それとも『ショッキングな体位』がアマゾンの売り上げランキング1位を占めることで、電子書籍端末の価値が損なわれるのを避けるべきか、という判断だ。
(Slate.com特約)