最新記事

バブル後遺症

アメリカは日本にはならない、普通なら

2010年8月19日(木)18時35分
ジェームズ・レッドベター

 理由のひとつは恐怖心だ。日本の失われた10年はアメリカ人にとって記憶に新しい出来事だ。警鐘を鳴らす手段としては、大恐慌といった歴史に残る不況の例よりも手軽に利用することができる。

 また前述したとおり、日本の失われた10年をめぐる議論は米政府の景気刺激策をめぐる議論の裏返しである。米政府が再び刺激策を実施することはあり得ないというのは周知の事実だから、かえってこの議論は激しさを増している。

日本の前例に学ぶべき点も

 だが感情や政治の問題はさておき、日本の経験には学ぶべき部分もある。

 例えば政府による景気刺激策は場合によっては役に立たないこともある。少なくとも(1)不景気になってから時間が経ち過ぎている、(2)金融政策との連携が取れていない、(3)規模が小さすぎる――の3つの条件下ではそうだ。

 日本はたぶん、全ての条件に当てはまった。今回のアメリカの景気刺激策で問題になるとすれば3つ目だろう。

 もう1つ問題がある。アメリカの金融機関は本当に不良債権の処理を終えたのか。それも完全に身ぎれいになったのか。

 バブル後の日本において、銀行の状況たるやまるで話にならなかった。自己資本は不足し、多額の不良債権を抱え、粉飾決算も行っていた。

 アメリカの銀行がそこまでひどいと考える人はほとんどいないだろう。公的資金の注入は迅速に行なわれ、多くの金融機関の決算は比較的堅調だ。にも関わらず、一部のエコノミストは不良債権の割合が今も増え続けていることや、銀行がどれほど不良債権化の可能性のある資産を抱えているかについて公表していない点を不安視している。

 だが日本型バブル後遺症への警鐘を鳴らしている人々がこうした正当な懸念を根拠として持ち出すことはない。これこそ、この警戒論がいかに政治的なものかを示す悲しくかつ雄弁な証拠だ。

Slate.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=ダウ1000ドル超安 中国

ビジネス

6月までFRB金利据え置きの観測高まる、予想上回る

ワールド

トランプ氏、政策変えずと表明 「金持ちになれる絶好

ビジネス

訂正-台湾、米関税対応で27億米ドルの支援策 貿易
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 3
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 8
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 9
    大使館にも門前払いされ、一時は物乞いに...ロシア軍…
  • 10
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中