最新記事

アメリカ経済

ありもしないインフレの亡霊を振り払え

2010年5月25日(火)18時12分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

 こうした緊縮財政は消費者や企業の動きを鈍らせ、成長を鈍化させ、物価の下落を招くだろう。今も1920年代のハイパーインフレの悪夢に怯えるヨーロッパは、いっそデフレに突っ込もうとしているのかもしれない。

 成長を続ける中国やインドなど新興市場の消費や生産のパワーが、インフレを引き起こす可能性はある。だが今のところその気配はない。こうした市場の動きや兆候に、物価の安定性を守る役割を担うFRBも気付いたようだ。

 4月に開かれたFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)では、いつものようにインフレを懸念する声が繰り返され、利上げの必要性やFRBが保有する資産の売却も議論された。だが最終的にはインフレは大部分、コントロール下にあるとの結論に至った。

「長期にわたる安定的なインフレ期待と、かなりの規模の資源の過剰が続きそうなことを考えると、総合インフレ率もコアインフレ率も2012年まで抑制され続けると見られる」

 FOMCの声明と私が引用した市場データは、危険な自己満足の兆候かもしれない。これまでもFRBと市場は、物価の予測に失敗してきた。インフレは起きていないと示すデータのいくつかも、すぐに変わってしまうかもしれない。だが、世界経済が対処すべきリスクの長いリストの中で、インフレが上位でないことはたしかだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国で高まるHV人気、EVしのぐ伸び 長距離モデル

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き

ワールド

国連の食糧・難民支援機関、資金不足で大幅人員削減へ

ビジネス

トランプ氏「習主席から電話」、関税で米中協議中と米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 7
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中