ありもしないインフレの亡霊を振り払え
こうした緊縮財政は消費者や企業の動きを鈍らせ、成長を鈍化させ、物価の下落を招くだろう。今も1920年代のハイパーインフレの悪夢に怯えるヨーロッパは、いっそデフレに突っ込もうとしているのかもしれない。
成長を続ける中国やインドなど新興市場の消費や生産のパワーが、インフレを引き起こす可能性はある。だが今のところその気配はない。こうした市場の動きや兆候に、物価の安定性を守る役割を担うFRBも気付いたようだ。
4月に開かれたFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)では、いつものようにインフレを懸念する声が繰り返され、利上げの必要性やFRBが保有する資産の売却も議論された。だが最終的にはインフレは大部分、コントロール下にあるとの結論に至った。
「長期にわたる安定的なインフレ期待と、かなりの規模の資源の過剰が続きそうなことを考えると、総合インフレ率もコアインフレ率も2012年まで抑制され続けると見られる」
FOMCの声明と私が引用した市場データは、危険な自己満足の兆候かもしれない。これまでもFRBと市場は、物価の予測に失敗してきた。インフレは起きていないと示すデータのいくつかも、すぐに変わってしまうかもしれない。だが、世界経済が対処すべきリスクの長いリストの中で、インフレが上位でないことはたしかだ。