日本株が魅力的な理由
「日本は負け犬」、という世界の投資家の常識は間違っている
アジアが世界経済の回復をリードし株式市場が活況を呈するなか、アジア経済の巨人である日本が勢いを失っているのは興味深い現象だ。日本株は4つの「U」──
低い保有率(underowned)、過小評価(undervalued)、敬遠(unloved)、魅力がない(ugly)──に苦しめられている。
日本は負け犬、というのが世界の投資家に共通した見解だ。政治は年老いた政治家や特権階級による茶番劇だし、高齢化が進み、人口は減っている。「失われた20年」を経験した経済は停滞とデフレから脱却できずにいる。
20年前には4万円近かった日経平均株価は今では1万円未満だし、09年3月には26年5カ月ぶりの安値水準に落ち込んだ。長期的な弱気市場とはまさにこのことだ。
だが、多くの点から見て日本株は安過ぎると筆者は考えている。
日本が陥った「バリュートラップ」
日本の株式市場の主役は、安価な消費財の輸出企業ではなく、高度な技術力を製品に生かしている輸出企業だ(こうした企業の株で得られる収益は国外の同様の企業に比べて平均3倍に上る)。
日本の輸出の約半分はアジア向けで、2割は中国向けというメリットもある。アジアは中国に引っ張られる形で世界最速ペースで成長を遂げており、日本がその恩恵を受けるのは確実だ。
実際、日本経済は既に上向き始めている。08年第4四半期から09年第1四半期にかけては内外需共に低迷し、実質GDP(国内総生産)成長率は年率換算で約14%の落ち込みとなった。だが今では経済は安定し、4月以降、輸出は力強い回復を遂げた。特に中国などアジア諸国向けの輸出が好調だ。
エコノミストの間では、09年後半の日本の実質GDP成長率は約3%になるというのが共通見解。野村証券は、日本企業の利益は10年に62%跳ね上がるとみている。
日本株は、割安感はあるものの、いつまでたっても割安のままの「バリュートラップ」と呼ばれる状態にある。投資家はもう長いこと、日本株から大きな利益を得ていない。
日本株は大口投資家の間で保有率が低く、敬遠されている。その一方で、日本の一般投資家たちが久しぶりに株取引に積極姿勢を示し始めたというのは興味深い。08会計年度に国内5大証券取引所で取引を行った一般投資家の数は200万人以上も増え、4200万人という新記録を達成した。
日本は今でも極めて豊かな国だ。世界最大の債権国(対外純資産はGDPの約44%)であり、純所得に対する家計純資産の割合がどの主要国より高い。日本の一般家庭の主婦がもっと投資に積極的になれば、株価は大きく押し上げられるだろう。
政権交代で株の奪い合いが始まる?
日本市場全体で見ると、株価純資産倍率は1・3倍(アメリカは2倍、日本はかつて5倍だった)で、株価売上倍率は0・5倍だ。株価の判断基準としてはこの2つが安定しており、最も優れていると筆者は考えている。
配当利回りは約2%。コーポレート・ガバナンス(企業統治)も改善されている。