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エネルギー新時代
液化石炭からトリウム原発まで「ポスト原発」の世界を変える技術
バイオ燃料より有望、液化石炭の未来
技術の向上でコスト面のハンディが解消された液化石炭が、クリーンな代替燃料として中国やアメリカで注目
未来を担う 中国・内モンゴル自治区オルドスに建設されるCTL工場(08年) Nao Nakanishi-Reuters
石炭を車の燃料に使えば、真っ黒な排ガスで空気が汚れそうだ。しかし、そんな「汚い鉱物」も液状になると話は別。専門家の予測が正しければ、液化石炭はガソリンに代わる燃料として、20年以内に世界各地で利用されるようになる。
液化石炭は自動車や列車だけでなくジェット機の燃料にもなる。しかも環境にやさしく経済的なうえ、多くの地域で簡単に手に入ると、推進派は言う。
液化石炭は目新しいものではない。1920年代にドイツで開発され、ナチスの軍用車両に利用されていた。しかし最近まで、石炭液化(CTL)技術はコストが高すぎた。03年までの20年間、原油価格は平均1バレル=25ドルにとどまっており、1バレル=45ドルの液化石炭の出番はなかった。
しかしその後、原油価格が高騰し、人々の環境意識も高まるなか、液化石炭は「正しい選択肢」として見直されつつある。エネルギー安全保障の面で有益で、地球温暖化対策にも威力を発揮するとみられている。「CTLは今後、経済と環境の両面で社会に貢献する技術になりうる」と、コンサルティング会社グローバル・インサイトのスティーブン・ネルは言う。
中国で複数のプロジェクトが進行
最近では、世界中で何十億ドルもの液化石炭が取引されている。世界全体の生産量は今のところ日量15万バレルだが、2020年には60万バレル、30年には180万バレルに増える見込みだ。
中国では液化石炭開発に250億ドルが投じられている。CTL技術で世界をリードする南アフリカの化学・燃料会社サソールは、中国の寧夏回族自治区と陜西省にそれぞれ60億ドルをかけてCTL工場を建設中。中国の国営石炭会社、神華集団は07年に中国初のCTL工場を稼働させる予定で、既に75億ドルを投資している。
一方、アメリカでは少なくとも9州が液化石炭の生産を検討中。イリノイ州とケンタッキー州では、州議会にCTL工場誘致法案を提出する動きがある。モンタナ州のブライアン・シュワイツァー知事は06年10月、13億ドルをかけてアメリカ初のCTL工場を建設すると表明。知事の顧問エリック・スターンは「アメリカの運輸燃料をすべてCTLでまかなえる日が来るかもしれない」と話す。
南アフリカは液化石炭利用のパイオニアだ。アパルトヘイト時代に経済制裁で石油の輸入が制限されたため、CTLインフラの整備が進んだ。サソールは南アで消費される輸送燃料の30%を供給している。