最新記事

北朝鮮デノミ

北朝鮮 変化の胎動

強まる経済制裁の包囲網
指導者の後継選びは最終局面に

2010.09.17

ニューストピックス

北朝鮮デノミ

アングラマネー排除のために通貨単位を変更したら、超インフレになって大混乱

2010年9月17日(金)12時02分

 北朝鮮の経済が大混乱に陥っている。09年11月に「デノミ」を実施した結果、猛烈なインフレが起き、食料不足が深刻化して餓死者が出ているという。

 デノミとは通貨単位の変更のことで、普通は額面のゼロを何桁か減らして単位を切り下げることを指す。北朝鮮は通貨ウォンのゼロを2つ減らした。旧100ウォン=新1ウォンとして、国民が持っていた旧貨幣を新貨幣と交換させたのだ。

 表向きの目的はインフレ(物価上昇)の抑制と言うが、どうやらそれだけではないらしい。一般家庭のたんす預金や、「新興富裕層」が闇取引などで稼いでいたアングラマネーを排除して、経済統制を強めるのが本当の狙いとみられている。

 デノミは突然始まった。しかもたんす預金など現金の旧貨幣は1人10万ウォン(約3000円)までしか新貨幣に交換できない。その後上限は50万ウォンに引き上げられたようだが、上限を超える現金は交換期限を過ぎて紙くずになってしまった。

 これでは国民もたまらない。そこで政府は、労働者に対してデノミ前と同額の給料を支払うという支離滅裂な手を打った。つまり労働者の給料は実質100倍に増えたことになる。その結果、新ウォンを握り締めた人たちが食料品を求めて殺到し、物価は再び上昇し始めた。

 闇市場では食料品が固定価格の5〜120倍で売買され、デノミによるインフレ抑制効果は完全に消えた。デノミ前と比較してコメの実勢価格は20〜30倍に跳ね上がったとも言われる。インフレを抑えるためのデノミが、逆にインフレを悪化させたわけだ。

 別の「ならず者国家」イランでも、インフレに対する国民の不満を抑えるためにデノミの実施を検討しているという。だが北朝鮮の大失敗を見れば、そう簡単には踏み切れないだろう。

[2010年4月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中