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北朝鮮デノミ
アングラマネー排除のために通貨単位を変更したら、超インフレになって大混乱
北朝鮮の経済が大混乱に陥っている。09年11月に「デノミ」を実施した結果、猛烈なインフレが起き、食料不足が深刻化して餓死者が出ているという。
デノミとは通貨単位の変更のことで、普通は額面のゼロを何桁か減らして単位を切り下げることを指す。北朝鮮は通貨ウォンのゼロを2つ減らした。旧100ウォン=新1ウォンとして、国民が持っていた旧貨幣を新貨幣と交換させたのだ。
表向きの目的はインフレ(物価上昇)の抑制と言うが、どうやらそれだけではないらしい。一般家庭のたんす預金や、「新興富裕層」が闇取引などで稼いでいたアングラマネーを排除して、経済統制を強めるのが本当の狙いとみられている。
デノミは突然始まった。しかもたんす預金など現金の旧貨幣は1人10万ウォン(約3000円)までしか新貨幣に交換できない。その後上限は50万ウォンに引き上げられたようだが、上限を超える現金は交換期限を過ぎて紙くずになってしまった。
これでは国民もたまらない。そこで政府は、労働者に対してデノミ前と同額の給料を支払うという支離滅裂な手を打った。つまり労働者の給料は実質100倍に増えたことになる。その結果、新ウォンを握り締めた人たちが食料品を求めて殺到し、物価は再び上昇し始めた。
闇市場では食料品が固定価格の5〜120倍で売買され、デノミによるインフレ抑制効果は完全に消えた。デノミ前と比較してコメの実勢価格は20〜30倍に跳ね上がったとも言われる。インフレを抑えるためのデノミが、逆にインフレを悪化させたわけだ。
別の「ならず者国家」イランでも、インフレに対する国民の不満を抑えるためにデノミの実施を検討しているという。だが北朝鮮の大失敗を見れば、そう簡単には踏み切れないだろう。
[2010年4月14日号掲載]