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暴落BP株は今が買い時か
株価の15%下落などまだ甘い。流出が止まらなければ、BPが他社に買い叩かれるのは時間の問題だ
英石油メジャー、BPの株は今が買い時らしい。少なくとも、BPの株価予想を生業にしているアナリストたちはそう見ている。
先週、金融情報サービスのブルームバーグが17人のアナリストにBP株の投資評価を聞いたところ、12人は「バイ(買い)」だった。残り5人は「ホールド(中立)」で「セル(売り)」は1人もいなかった。もちろんアナリストは滅多にセルの評価は出さないし、ホールドは事実上セルと同じだ。
それにしても、本当にこれでいいのだろうか。BP株は2日前に15%暴落し、時価総額にして300億ドルが吹き飛んだばかりだというのに、売却を推奨るアナリストが1人もいないなんて。
もっとも、危機のときこそ株を買えというのは昔ながらの投資戦略。BPが起こしたメキシコ湾での原油流出事故のような惨事には、人々は総じて過剰に反応する。震え上がった人々は、事故に少しでも関係しそうな企業の株を一斉に売り始める。そこへ情報通の投資家が腕まくりをして突進し、安くなった株を買いあさる、という寸法だ。
今がまさにその時だ。原油流出事故が発生した4月20日以降、BP株は40%近く暴落し、時価総額にして1830億ドルから約1150億ドルに急減した。情報通と言われる投資家たちは、この株価下落が一時的なものに過ぎないと考えている。世間が正気を取り戻し、1日約1万9000バレルの原油流出が企業を破滅させるほどの大惨事のわけはないと気づけば株価は回復する、という見方に賭けているのだ。
BP株がまだそこそこ高い理由
フィラデルフィアのTCPグローバル・インベストメント・マネジメントのマネジング・ディレクターで、ブルームバーグが調査したアナリストの1人でもあるジェラルド・E・スネリウスは、38ドルとうBPの株価は「最悪の惨事に対応する水準であり、最悪の惨事より少しでもいい材料が出てくれば株価は上がる」と言う。
もちろん、最悪の惨事より少しでもマシな材料があるなら願ってもないことだ。BPの株主にとってだけではない。ペリカンや漁師、そして人類すべてにとってもうれしい知らせだ。
だが、疑問も沸く。もし今の株価が最悪の惨事の値段だとしたら、38ドルは高すぎないか? なぜ0ドルではないのだろう?
これは、最悪の惨事をどう定義するかによる。BPは原油の除去作業にすでに約10億ドルを注ぎ込んだ。早く「自分の生活を取り戻したい」という失言で名を馳せたBPのトニー・ヘイワード最高経営責任者(CEO)は、作業にかかる最終的なコストは約30億ドルにもなり得ると語った。
だがこの見積もりも、安過ぎると嘲笑されてしまった。「ウォール街はこの見積もりを信じていないと断言できる」とニューオーリンズを拠点とする原油アナリストのブレーク・フェルナンデスは言う。本当のコストはおそらく100億〜300億ドルの域だろう。
BPの財務悪化について様々な憶測が飛び交うなか、世間の関心はもはやこの石油大手が買収されるか否かを通り越して、「いつ」買収されるかに変わったようだ。
では、BPの実際の財政状況はどうなのか。まず良い点から挙げてみよう。BPは莫大な利益を生み出し、今も莫大なキャッシュを握っているということ。BPは今年1〜3月期だけで60億ドルと、前年同期の2倍以上の利益を上げた。フリーキャッシュフローは70億ドルに上る。
フェルナンデスによると、原油価格が1バレル=60ドルを超える水準に留まるかぎり、BPがキャッシュを使い果たすことはない。先月の原油価格は1バレル=70ドル前後だったから、今のところは安泰に見える。
BP株が今も魅力的な最大の理由は、この潤沢なキャッシュを原資として9%という好配当(会社にとっては年間100億ドルの支出)を払っているから。もっとも、民主党上院議員のチャールズ・シューマーとロン・ワイデンは今、配当支払いを延期するよう求めているが。