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私がフェースブックをやめた理由
プライバシー侵害の軌道修正は反省のフリをしているだけ。フェースブックにとってユーザーは「商品」でしかない
マーク・ザッカーバーグは謝罪したわけではない。それでも、人気ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェースブック創設者でCEO(最高経営責任者)でもある26歳の彼は、(微妙な)軌道修正を約束した。
きっかけは、フェースブックがプライバシー保護(実際にはプライバシー侵害)に関する方針を変更し、ユーザーの怒りを買ったこと。ワシントン・ポスト紙への寄稿のなかで、ザッカーバーグは無垢な少年のような口調で、「よりオープンでつながった世界がいい世界」であり、方針変更の目的は情報を共有しやすくすることだったと主張した。
さらにザッカーバーグは、ユーザーの怒りを鎮めるため、プライバシー管理設定を再度見直す予定だとも書いている。
この「見直し」は実際には大したものではないと思う。また、仮に大掛かりな変更を行ったとしても、私にとってはもう遅すぎる。
一連のトラブルが勃発したのは4月。フェースブックが行ったプライバシー管理設定の変更によって、より多くの個人情報がウェブ上に公開されることになった。さらに個人情報の一部はイエルプ、パンドラ、マイクロソフトなどの提携企業と共有されるという。
ITジャーナリストは一斉に批判の声を上げた。一部のユーザーはフェースブックを退会すると断言し、ヨーロッパやカナダ、アメリカの政府関係者も強く反発している。
フェースブックは「新方針そのものに問題はないが、説明不足だった」という馬鹿げた主張を広めようとした。それでも批判が収まらないと、ザッカーバーグは仲間と相談して、変更を撤回する道を模索。そして5月24日、複雑すぎる(わざと複雑にしているという指摘もある)プライバシー管理の設定をもっとシンプルなものに改善すると約束した(ちなみに、ワシントン・ポストのドナルド・グラハム会長はザッカーバーグの友人で、フェースブック役員でもある)。
本当の顧客は広告主?
これで丸く収まった? とんでもない。それでも、フェースブックが手の内を見せたことで、ユーザーは同社の本当の姿を理解できる。
フェースブックが突然、信頼に足る企業に生まれ変わると期待するのは愚かすぎる。同社はこの5年間、プライバシーに関する方針をたびたび改定してきたが、その方向性は常に同じ。そして、そのたびに同じ光景が繰り返される。
ユーザーが不満の声を上げると、フェースブックはまず時間稼ぎをする。そのうちに反論を始めたかと思うと、今度は深く後悔しているフリをして変更を撤回する──ただし、撤回するのは変更のごく一部。結局、以前より多くの個人情報が開示されるようになったままであることに、誰も気づかないようだ。そして、批判の嵐が収まると、また新たな変更が発表される。
要は、フェースブックは個人情報を必要としているのだ。同社のビジネスはそのうえに成り立っているのだから。
重要なのは、フェースブックにとってあなたは顧客ではなく商品だということ。真の顧客は広告主だ。あなたの存在が有用なのは、他のユーザーとセットにされて広告主に売られる商品だから。個人情報を多く開示するほど、あなたの価値も上がる。
2005年には、同社のプライバシーポリシーは1文だけだった(仲間以外の誰かにあなたの情報が共有されることはない、とある)。それが、今では憲法より長くなり、法律家でなければ解釈できない。
同社はなぜ、05年のシンプルな方針を変えてしまったのか。勝手な推測だが、私はユーザーではなく広告主の意向のせいではないかと思う。