最新記事

【事例3】5000人のコンサル脳を仮想結合

クラウド化知的生産革命

仕事の効率化から「知」の創造まで
新世代コンピューティングの基礎知識

2010.02.04

ニューストピックス

【事例3】5000人のコンサル脳を仮想結合

世界中の社員を「集め」、3日間で2カ月分のブレインストーミングを達成

2010年2月4日(木)12時04分
ラーナ・フォルーハー(ビジネス担当)

 パリに本社を置く国際ITコンサルティング企業ソジェティは08年4月、世界14カ国に抱える社員1万8000人が参加できるバーチャル・ブレインストーミング・セッションを実施した。事業の改善点について多様なアイデアを集めるためだ。

 この「革新ブレスト」の運営を任されたのがマーケティング部門のマネジャーを務めるルネ・スペールマンだった。「小さな会議室にいるような感覚で、何千人もの社員が共有できるセッションを目指した。巨大な組織の中で社員が互いの考えに触れたり、それを活用することができず、多くの優れたアイデアが埋もれていると感じていた」

 社員が好きなときにログオンしてプレゼンテーションの動画を見たり、リアルタイムでコメントを投稿したり、特定のプロジェクトを評価できるようにする──。これらを実現するために特別に開発されたのが、3日間限定で機能するクラウド・コンピューティングサービスだ。

「どれだけの人がログオンするか分からなかったので、クラッシュしないよう高水準の性能を備えておく必要があった」と、スペールマンは言う。実際、最初の2時間で1万2000件以上のコメントが投稿され、2000件以上のアイデアについてリアルタイムで議論が行われた。

必要なときにいつでも使える

 幹部たちは、そのすべてをパリの「作戦司令室」で観察。部屋にはビデオリンクでオンライン討論の映像が流され、幹部らが参加者に質問したり、投稿されたアイデアにコメントできるようになっていた。3日間72時間で、約5000人の社員が参加したという。

 スペールマンは、このブレストで社の生産性が大幅に改善されたと語る。マーケティングや企業の社会的責任に関する戦略、環境問題への関心をどう事業につなげるか、などについて「多くの新しいアイデアを集め、評価することができた。通常なら2カ月かかるところだ」。

 この試みには、仕事とプライベートの柔軟な切り替えを実践するという意味合いもあった。社員はエントリーコードさえ打ち込めば、自宅とオフィスどちらからでも都合のいい時間にログオンすることができたからだ。

 成功したとはいえ、実現までの準備には膨大な時間が費やされた。「クラウド・コンピューティングを活用したブレストは3年に1回程度でいいだろう」と、スペールマンは言う。「必要なときにだけ利用すればいいところが、クラウドの素晴らしさだ」

[2009年10月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税引き上げ、中国が強い不満表明 「断固とした措

ビジネス

アリババ、1─3月期は売上高が予想上回る 利益は大

ビジネス

米USTR、対中関税引き上げ勧告 「不公正」慣行に

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 7

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中