最新記事

次期財務大臣が民主党政権を救う

オブザーヴィング
民主党

気鋭の日本政治ウォッチャーが読む
鳩山政権と民主党ニッポンの進路
by トバイアス・ハリス

2009.09.14

ニューストピックス

次期財務大臣が民主党政権を救う

経験豊かな藤井裕久を財務大臣に選ぶことで、鳩山は政権運営の現実性を示すことができる

2009年9月14日(月)18時23分

[2009年8月21日更新]

 8月30日に行われる総選挙に向けて作成された民主党の比例代表名簿に、最後の最後で衆院南関東ブロックのリストに滑り込んだ人物がいる。藤井裕久最高顧問(77)だ。すでに引退を表明していた藤井だが、政界でのキャリアは長い。旧大蔵省出身で、76年に同省主計局主計官の役職を辞した後、政治の道へ。自民党に所属して参議院議員に2期当選し、その後は新生党、新進党、自由党、民主党にて衆議院議員を6期務めた。細川内閣と羽田内閣では蔵相も経験した。今回、藤井は民主党の鳩山由紀夫代表の熱心な説得で、もう一度出馬することを決めたようだ。

 鳩山が藤井に出馬を要請した理由は明白だ。民主党が政権を担うことになったら、どうしても経験豊かな政治家が必要になるからだ。岡田克也幹事長は20日、藤井が鳩山内閣の中心的な存在になることを示唆した。ただし鳩山は賢明にも、政府の主要ポストは国会議員が就くべきだと語った。そうなると、藤井がもう一度出馬することになったのは自然な成り行きだ。藤井が登載された南関東ブロックの名簿を見る限り、小沢一郎代表代行と近い関係であることも有利に働いているようだ。

 以前私は、予算編成において政治家により大きな権限を与えることへの藤井の姿勢について書いた。藤井の現実路線は、少なくとも2010年の参院選、あるいはもっと先まで民主党を優位に導く最良なアプローチかもしれない。財務省の舵取りをする能力があることを国民(と投資家)に示すことは、民主党が政権を獲得してから直面する他の重要課題と同じくらい重要だ。一方で、財務省からも「民主党は誠意を示した」と受け取られる可能性がある。そうなれば、財務省から民主党の計画への賛同を得やすくなる。

 私は今も、民主党が政権を獲得したら、政権移行期間の後に急激な変革を推し進めるのではないかと思っている。ただし藤井がいれば、少なくとも民主党政権を1年ないし2年継続させる助けになるかもしれない。閣僚経験者の少ない民主党は、あらゆる助けを必要としている。藤井の年齢を懸念する声もあるが、98年には79歳になったばかりの宮沢喜一が蔵相に再び就任し、2年以上もその職務を担った。これは中曽根内閣以来、最長だ。

 鳩山のリーダーシップが疑問視されるなか、民主党が政権を獲得した際にはよい閣僚選びがなおさら重要になる。藤井を選んだ動きはいい兆しだ。彼に出馬を要請することで、少なくとも鳩山は自分の政権には優秀な人材が必要になると理解していることを示した。

 残るは小沢問題だが......。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中