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日出づる国のトウモロコシ文化
ユーモア作家がつづる「きわめて主観的な観察」
本の中身は表紙を見てもわからないとよく言われる。でも、この本は例外だ。カツラをかぶって女物の着物を着た作者と芸者もどきの女性たちの写真を見れば、すぐにわかる。どう考えても、まじめな日本学の本ではない。
『デイヴ・バリーの日本を笑う』は、91年夏に妻子を連れて日本に3週間滞在した際の「きわめて主観的な観察」をつづった本。ただし、「ビールの影響があるかもしれない」ことは本人も認めている。
一流ユーモア作家の例にもれず、バリーも鋭い人間観察眼とユニークな洞察力の持ち主だ(ちょっとイカれてはいるが)。トウモロコシのコーンが日本文化に重要な役割を果たしているという事実に気づいた外国人(日本人も)が、これまで何人いただろうか。
日本では、ピザにもスパゲティソースにも、目玉焼きにもコーンは欠かせない。レストランの入り口には、巨大なプラスチックのトウモロコシの穂が飾ってある。
バリーの下した結論はこうだ。「日本の男たちは家に帰るときっとこう言うのだ。『今日はコーンの気分だな。巨大トウモロコシのレストランに行こう』と」
食に関する話題は多い。バリー一家は「目玉や吸盤、その他のどうしても我慢できない臓器のくっついていない食べ物」を探すのに必死だったからだ。
食べ物以外の話もある。相撲、神社仏閣、右翼、旅館。靴からスリッパに履き替え、スリッパを脱いではだしになることの理論的解釈についても語っている。
「今まで見た演劇で一番バカみたい」な歌舞伎、驚異的なサービス、日本人の勤労意欲、画一性、漢字についても述べている(作者が考案した「ウグイスのフン」の漢字は一見の価値あり)。
「きちんとした説を読みたければ、他の本を買ったらいい」とバリーは警告する。しかし、まったく新しいレンズを通して日本を見たければ、おすすめの一冊だ。コーンに対する見方が変わるだろう。
[2005年5月18日号掲載]