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排出権の売買で青空は取り戻せる
世界初の温室効果ガス取引所CCXの創設者が温暖化防止に自信満々な理由
バラク・オバマとジョン・マケイン両米大統領候補の一致した主張とは?それは温室効果ガス排出量の削減。新大統領による新政策を先取りして、民間主導のシカゴ気候取引所(CCX)に参加した企業も少なくない。03年に世界で初の排出権取引市場CCXを創設したリチャード・サンダーに、本誌ファリード・ザカリアが聞いた。
----CCXはどのように機能しているのか?
いわゆるキャップ・アンド・トレード方式で、どの参加企業にも温室効果ガス排出枠(キャップ)が決められている。具体的には00〜10年で6%の排出削減だ。6%を超えて削減した企業は、その分を排出権として売りに出せる。
----各企業に6%の削減を義務づけるほうが簡単では?
すぐにでも削減できる企業と、そうでない企業がある。できない企業は、できるようになるまで削減枠を超過達成した企業の排出権を買わなければならない。
----CCXの参加企業は?
IBM、デュポン、ユナイテッド・テクノロジーズ、インテルなどダウ平均株価対象企業の17%。フォード、ハネウェルなど売上高でみた米企業トップ100社の11%。アメリカの主要電力会社も約25%が参加している。シカゴやポートランドなど8都市、タフツ大学(マサチューセッツ州)やカリフォルニア大学サンディエゴ校など8大学も含まれる。
----法的な定めでもないのに、企業が6%削減を急ぐのはなぜ?
6%以上の削減に自信がある企業は、排出権を売って儲けられるからだ。時代の流れに乗り遅れたくないと思う企業も多い。法的規制が導入される前に準備しておきたいのだ。
----将来、アメリカでキャップ・アンド・トレード方式が義務づけられると思うか?
もちろん。フォードのように、自社工場を置くイギリスやフランス、日本が(08年から排出権取引を開始するとした)京都議定書を批准しているという理由で、CCXに加わった企業もある。
----アメリカにおける温室効果ガス排出権の価格推移は?
1トンにつき1ドルからスタートし、価格はしばらくそのあたりにとどまっていた。だが今年の大統領選の予備選段階でヒラリー・クリントン、オバマ、マケインの有力候補がそろって排出権取引の制度に賛成したものだから、一気に1トン当たり1・9ドルから7ドルにはね上がった。
----キャップ・アンド・トレードは汚職につながりやすいと批判するエコノミストもいる。
彼らは現実を理解していない。
----というと?
この方式が初めて大規模に実施されたのは、大気浄化法が規制強化された90年だ。10年間で大気中の二酸化硫黄を半減させることが義務づけられた。かつて排出削減には年間何百億ドルもかかると考えられたが、環境保護庁によると(この方式のおかげで)現在のコストは年間10億〜30億ドルという。
医療費も、肺疾患が減るおかげで年間1200億ドルのコスト減が期待できる。こんなに効率的な方式はほかにないだろう。
----温室効果ガスの増加には中国とインドの関与も大きい。彼らは取引に参加するだろうか。
(CCXには)中国の五つの企業が入っているし、私たちはインドの貧しいケララ州で、リサイクルによってバイオガスを精製するプロジェクトを行っている。
----しかし中国やインドの政府にこの方式を導入させられるか?
順序が逆だ。まず民間企業が先を走り、その後で政府が認める。現に私たちは、インドで排出権取引をスタートさせようとしている。国有の中国石油天然気(ペトロチャイナ)とも覚書を交わした。私は、世間で言うほど中国やインドが遅れているとも、ヨーロッパが進んでいるとも思わない。
----企業が正直に削減努力をすると信じていいのか?
これまでのところ問題は起きていない。監視する技術があるからだ。もちろん、絶対に不正な取引やルール違反がないとはいえない。しかし私たちのシステムが効率的で、かつ資本調達を可能にしていることは事実だ。
誤った方向にいく危険ばかり口にする人たちこそ、この200年間資本市場で私たちが試行錯誤をしながら学んできたという事実から目を背けているのではないか。
EU(欧州連合)はもともと、鉄鋼や石炭の安定調達を確保するために生まれた。キャップ・アンド・トレード方式も、いずれ地球温暖化を解決する手本になる。20年もたてば、そうなっている。
[2008年10月 1日号掲載]