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米医療保険改革
オバマ政権の「国民皆保険」構想に
立ちはだかるこれだけの難題
オバマの病的な医療保険改革
「国民皆保険」など聞こえはいいが、実行すれば医療費膨張と財政破綻を招く虚言に過ぎない
バラク・オバマ米大統領の医療保険「改革」が世間知らずなのか偽善なのかそれとも単に大嘘なのかは、区別がつかない。たぶん、そのすべてだろう。
オバマは、医療費の急膨張を抑えることが至上命令だと言い続けている。それ自体は正しい。問題は、いま医療保険「改革」として喧伝されている方法では、医療費抑制はほぼ不可能なだけでなく、正反対の結果になる可能性もきわめて高いということだ。
オバマ自身の大統領経済諮問委員会(CEA)の最近の報告書は、医療費の抑制がなぜそれほど重要かを示している。75年以降、国民一人当たりの年間の医療費(物価調整後)の伸びは、一人当たりの経済成長の伸びを毎年2.1ポイント上回ってきた。
もしこの傾向が続けば、次のことが起こるとCEAは予測する。
■60年にはGDP(国内総生産)の5%だった医療費は現在ではほぼ18%に達すると推定され、2040年までには34%に達するだろう。つまり、GDPの3分の1だ。
■それぞれ高齢者と低所得者を対象とした公的医療保険、メディケア(高齢者医療保険制度)とメディケイドの支払いは、現在GDPの6%を占めるが、これが40年までには15%に増加する。現在の連邦政府支出のほぼ4分の3に匹敵する額だ。
■雇用者が被雇用者とその家族のために払う医療保険料は、96~06年の間に85%増加して年1万1941ドルになった(物価調整後)。それが25年までには2万5200ドル、40年までには4万5000ドルに増加する。その莫大なコストを捻出するため、雇用者は従業員の手取り給与を減らさざるを得なくなるだろう。
元凶は青天井の報酬システム
オバマ政権は、医療費抑制について果てしなく喋る。喋り続けてさえいれば問題は解決するとでもいうように。「上昇曲線を抑える」が今の流行りのフレーズだ。
オバマは医者や病院、製薬会社、医療機器メーカーなど主要な医療関係団体のトップをホワイトハウスに招いた。上昇曲線を抑えることで全員が一致した。だがこれはほとんどPRだ。米国医師会(AMA)や米病院協会が、全米80万人の医者や5700の病院を制御できるはずがない。
医療費膨張の主な原因は明らかだ。病院と医者の報酬は患者に提供した個々の医療サービスを積み上げる形で決まり、それに応じた額が政府や民間の保険から支払われる。こうした青天井の報酬システムでは、医者も病院もより多くの医療サービスを提供するほうがトクになり、患者もそれを期待する。新しく高価な医療技術も、たくさん使えば使うほど利益になる。
不運なことに、医療提供者や患者を喜ばせる行為の一つ一つが、国家全体を傷つけている。
これが医療制度の最も難しいジレンマだが、オバマはこの点に正面から取り組もうとしていない。医療費抑制を強調する彼の姿勢は見かけ倒しだ。