自己弁護に追い込まれた「独裁者」の落ち目
例えば中国疾病予防コントロールセンター(CCDC)という国家衛生健康委員会直属の研究機関は2月17日発行の専門誌「中華流行病学雑誌」に、新型肺炎の拡散に関する論文を発表した。それによると、全国における新型肺炎の感染者数は昨年12月末までが104人、今年1月1~10日は653人だったが、1月11日~20日に5417人と一気に増えたという。
つまり感染者数が急増し始めたのは、まさに習が肺炎のことを知りながら不作為を続けた1月7日から20日までの間である。この数字を見た多くの人が、急増を許した責任者は習だと思うであろう。
環球時報までが「当てつけ」
共産党機関紙・人民日報系の環球時報もこの一件に噛み付いた。環球時報(電子版)は上述の論文を取り上げ、「1月11~20日の感染急増は当時の病院取材とも合致する。しかし医療現場の懸念は、直ちに有効な措置にはつながらなかった」と、政府が「有効な措置」を取らなかったことを暗に批判した。
環球時報自身が意図しているかどうかは分からないが、このような批判はある意味ではまさに習への当てつけであり、一番痛いところをわざと突くものだった。
習近平が党中央の指導部と全国民に対して行なったつたない自己弁護は、逆に彼自身の責任問題に対する疑念と批判を招き、より一層の窮地に追い込んでいる。習の権威失墜と求心力の低下は明々白々だ。今後、肺炎の拡大がいつ治まるか依然として不透明だが、それが治まっても習に対する疑念と批判は簡単に消えそうもない。一見確立したかのように見えた「習近平一強」の個人独裁体制は、目に見えない形で崩れようとしている。
【訂正】1ページ目にある旧正月の元日の日付を「1月25日」に修正しました。
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