コラム

米大統領選でトランプ・バンス陣営を襲う「ソファでハレンチ行為」の醜聞

2024年09月10日(火)09時23分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
ティム・ワルズ, ティム・ウォルズ, カマラ・ハリス, J.D.バンス, ドナルド・トランプ, 米大統領選

©2024 ROGERS–ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<自身に似たバンスを副大統領候補に指名してしまったトランプ前大統領。案の定、バンスの「トランプ型」失言に見舞われるが、それに加え妙に性的なジョークも逆風になっている、と米出身芸人のパックンは風刺画で解説します>

本来、米大統領候補が副大統領候補を指名するときには、自分の弱点を補うように違うタイプの人を選ぶのが鉄則。カリフォルニア州の都会出身の元検察官で有色人種の女性である民主党のカマラ・ハリス大統領候補が、中西部の田舎出身の元教師で白人男性であるティム・ワルズ(Tim Walz)を抜擢したのはセオリーどおりの人選だ。一方の凹に他方の凸が重なる、完成度の高い組み合わせだ。

ワルズは退役軍人であり、風刺画にあるとおり、高校のアメフト部コーチとして州大会での優勝経験もある。ハリスが苦手な有権者はそんな彼にばっちり引かれるはず。風刺画で黒板に書いてあるのは「スイープ」という攻撃プレーの図だ。味方選手と敵の区別にXとOを使うのがアメフトの定番。XO醬を使うのが香港料理の定番。覚えておこう。


ハリス&ワルズと対照的なのが共和党のトランプ&バンスのコンビ。バイデンに楽勝しそうで自信過剰だったせいか、トランプ前大統領は自分と同じタイプのJ.D.バンス(J.D.Vance)を指名した。アイビーリーグ卒のお金持ちで白人男性という点が全て同じだが、それだけではない。男女差別発言も有名で、民事裁判で性加害が認められたトランプと並んで、バンスもMisogyny(ミソジニー、女性蔑視)が特徴だ。特に目立ったのは「アメリカは子なしの猫好きおばさんたちに支配されている」という問題発言。これで多くの女性も猫も敵に回している。

風刺画に描かれたクッションはこの失言を指しているが、couch(ソファ)にも意味がある。バンスはベストセラー自叙伝『ヒルビリー・エレジー』で、若い頃ソファに挟んだゴム手袋で自慰行為をしたと告白した......というでっち上げのジョークがバズっているのだ。もちろん、そんなこと本には書いていない(実際やったかは不明だけど)。だがその印象は付いてしまった。ワルズも「バンスと早く討論したい。彼がソファから離れられたらね......」といじわるな皮肉を放っている。

とにかく凸に凹のバランスペアに対して、凹に凹のアンバランスペアは苦戦中だ。世論調査の結果を見て本人たちも凹んでいるはず。このままだと本選挙でDemocracy Sweep(民主主義の圧勝)になり得る。凹凹ペアがボコボコにされそう。

ポイント

THE COACH VS THE COUCH
コーチ対カウチ(ソファ)

I LOVE THIS GAME!
このスポーツ、大好きだ!

I LOVE THIS SOFA!
このソファ、大好きだ!

NO CAT LADIES ALLOWED
ネコ好き女お断り。「ネコ好き女」は子供のいない女性を侮辱する常套句として使われる。

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story