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「解任好き」トランプはロシア疑惑の特別検察官もクビにする?
ムラーの捜査チームはフェアでプロフェッショナルとの評判だが… Joshua Roberts-REUTERS
<ロシア疑惑のムラー特別検察官をトランプが解任したがっているのは明らかで、政治的・法律的な壁は高いものの強行策に出る可能性も>
どんなに偉大な寓話作家でも、トランプ時代に生きる不条理に匹敵する虚構を創作することはできない。私はトランプ政権についての文章を書くとき、可能な限り締め切りを先に延ばす。1つのツイッターのつぶやきやスタッフの解任、非常識な記者会見によって、政治状況が一変する可能性が常にあるからだ。
なかでも3月第4週は特に目まぐるしい1週間だった。中国との貿易戦争、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の解任発表、バイデン前副大統領に対し、ツイッターで「ぶちのめす」と脅し、ロシア疑惑を担当するトランプ弁護団の筆頭弁護士ジョン・ダウドの辞任――。
全て私が国際線の旅客機に乗っていた間の出来事だ。トランプ時代には、2時間ニュースに触れていないだけで変化に付いていけなくなる。
ダウドは1週間前、記者に送った電子メールでロシア疑惑の調査の完全な終了を主張したばかりだった。その数日後に辞任した理由は、ムラー特別検察官に対する「ツイート攻撃」を控えるようにという助言を大統領が拒否したからだ。
対決姿勢を強めるトランプは3月18日、ついにツイッターでムラーを名指しで非難した。「なぜムラーのチームには強硬な民主党員が13人もいるのか? その一部は邪悪なヒラリーの有力支援者で、共和党員はゼロ......これで公正と言えるのか?」
ムラーの捜査は「完全な魔女狩り」だと言いたいらしい。政治評論家の間では、「解任好き」のトランプがムラーについても解任準備を進めているとの観測が浮上した。
立ちはだかる訴訟の壁
与党・共和党にはムラーを擁護する声が多いが、大半の議員は短気な大統領から特別検察官を守る立法措置には及び腰だ。同党の重鎮リンゼー・グラム上院議員は、「特別検察官保護法」のアイデアを披露した。特別検察官の解任権限を持つ司法長官または副長官が実際に解任手続きに入る際には、複数の連邦判事で構成される委員会の審査を義務付けるというものだ。
だが、共和党上下両院のリーダーであるマコネル上院院内総務とライアン下院議長は、口ではムラー支持を唱える一方、この法案の審議は拒否した。
トランプは昨年6月にもムラーを解任しようとしたことがある。このまま行けば特別検察官の解任は避けられないような空気だが、実際には(不可能ではないが)かなり難しい。
ムラーは在任期間が最も長いFBI長官経験者の1人。これほど長く公職にありながら、誠実な人柄を疑われたことが1度もない、極めてまれな人物だ。
トランプとその周辺を除けば、ムラーの捜査チームと接触した人々はフェアでプロフェッショナルな仕事ぶりだったと口をそろえる。トランプが本気でムラーを解任したければ、政治的な泥仕合に持ち込む覚悟が必要だ。
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