コラム

知られざる数億ションの世界(1)丸見えで恥ずかしい浴室が当たり前?その理由は......

2022年08月02日(火)13時26分

しかしながら、前述したとおり全面ガラス張りの浴室は、超高額マンションにおいては「よくあるパターン」なのだ。

そう書くと、高額マンションを買う人は、ガラス張りの浴室が好きなのか、と思われがち。そうではなく、「お望みなら、ここまで大幅な間取り変更もできます」とアピールする目的で、ガラス張りの浴室がつくられるのである。

高額マンションのなかでも10億ションは、間取りや設備のほとんどがオーダーメイドとなる。

あらかじめ用意された間取りはあるが、購入者の希望でどのような間取りも設備も可能になる(その分、追加費用が発生する)。

どんな部屋にするかは、購入者次第。なので、モデルルームは、「こんなこともできます」というショールームの性格が強くなるわけだ。

その際、思い切った提案を行うのがキッチンと浴室。キッチンと浴室は工夫ポイントが多いし、素材や設備機器にいくらでもお金をかけることができる。つまり、プランナーの腕の見せどころとなる。

といっても、キッチンは使いやすさが重要なので、遊びの要素を加えにくい。その点、浴室は思い切り遊べるし、突拍子もないこともできる。

遊び心があって、突拍子もないデザインとして、全面ガラス張りの浴室が生まれてしまうわけだ。

「見学者をびっくりさせるような演出」との前提で、冒頭の写真を改めて見てみよう。

220802sakurai1.jpeg.jpg

この写真を基に、浴室とベッドの間に木質の壁と木質ドアを付けた状態を想像していただきたい。ガラスを外し、ベッド側から浴室と脱衣スペースが見えないようにするわけだ。

そうなると、寝室に併設された普通の浴室空間になってしまう。

「ガラス張りの浴室」は、普通の浴室をこのように演出することも可能です、と実証しているだけなのだ。

実際に、よくつくられる浴室とは......

では、ガラス張りの浴室を見た購入希望者はどのような反応を示すのか。

ベッドから丸見えになる浴室をそのまま採用するのは、1人暮らしの人くらい。それはそうだろう。家人から丸見えになる浴室は落ち着かない。

一方で、「入浴すると、見晴らしがよい」浴室を好む人は多い。浴室を大きな窓のそばに移し、展望風呂のようにするわけだ。それも、高額マンションの"あるある"なのである。

タワーマンションの最上階に設定された高額住戸で、窓に面した浴室+トイレを特注した人もいる。展望風呂とともに、眺望を満喫しながら使用できるトイレも求めたわけだ。

ちなみに、そのトイレを希望したのは、男性ではなく女性。もちろん、外からトイレ内は見えず、便器に腰掛ければ正面に大きな空が見える。開放的なトイレに憧れていたのだそうで、そんな夢を実現できるのも、数億ション、10億ションの世界なのである。

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story