コラム

【動画】生き物のような耽美的空間 ダンスそのものを超えようとする映像作家

2018年06月20日(水)11時00分

From Angelo Vasta @angelo_vasta

<コリオグラファー(振付師)でない写真家や映像作家がつくり出すダンスの作品は、表面的になりがち。かつてダンサーを夢見たアンジェロ・ヴァスタの作品は、何が違うのか>

スポーツとダンスは、写真家や映像作家にとって最も酷な、あるいは難しい撮影ジャンルであるかもしれない。なぜなら、作品がつくり出すその世界の最も魅力的な部分は、被写体、つまりアスリートやダンサーたちの才能と能力に左右されるからだ。

もちろん、舞台裏のフィーチャーものやシーンの組み合わせ方によって、作り手側が独自の世界をつくり出すことは大いに可能だ。しかし、それはあくまでもセカンドストーリーなのである。

とりわけ、後者のダンスはそうだろう。写真家や映像作家が求める作品のビジュアル性の先にあるかもしれない世界には、通常すでにコリオグラファー(振付師)の世界観が存在している。そして、コリオグラファーでない写真家や映像作家がつくり出す、ダンスそのものを基軸とした作品は、いかに美しい、力強いものだとしても、大半が表面的で、単なる作品紹介の域を出ないもので終わってしまいがちなのである。

今回取り上げるのは、そんなダンスをテーマとし、その限界を越えようとしている映像作家だ。イタリアの地方で生まれ育ち、ダンサーを夢見ていたが、その後23歳になってニューヨークに渡り、映像を学んだ30歳のアンジェロ・ヴァスタである。

ヴァスタの作品の最大の魅力の1つは、彼自身がコリオグラファー的要素を兼ね備えていることだ。単に1つの空間でダンサーたちの美や動きを完全にコントロールしようとし、魅力を引き出そうとしているのではない。その都度、垣間見られるであろうシーンごとの演出的要素を組み合わせながら、空間そのものを1つの生き物のように捉えているのである。見る者は時として、舞台にいるような感覚、いやその生き物に同化しているような錯覚にさえ陥るのである。

むろん、ヴァスタはコリオグラファーではない。それについて学んだこともないと言う。また、ダンスも本格的に行っていたわけではない。

Angelo Vastaさん(@angelo_vasta)がシェアした投稿 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、巡航ミサイル発射訓練を監督=KC

ビジネス

午前の日経平均は反落、需給面での売りで 一巡後は小

ビジネス

利上げ「数カ月に1回」の声、為替の影響に言及も=日

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story