IEEEが提言を発表 泳ぐロボット?目指すは海のクリーンアップ
海や川の中で、水中ロボットが浮遊する膨大な量のゴミを飲み込んでいる映像をご覧になったことがあるかもしれません。
これは素晴らしい技術によるものです。また、その目標も立派です。
世界の海洋から漂流物を取り除こうとしているのです。2019年には、海洋の中に重量にして268,000トン以上のプラスチックゴミが5兆2,500億個もあったと推定されています。しかし、海洋や河川を汚染している物質は、プラスチックだけではありません。すべての物質を考慮すると、最近の推定では、171兆個以上のゴミが海に漂っている可能性があると言われています。
海の小さなゴミは、海洋生物が食べてしまう恐れがあります。それらが生物の体内に蓄積されれば、感染の温床となったり、小さな生物が大きな生物に食べられることで食物連鎖の上位の生物の体内へと達する可能性があります。毎年、約1万個のコンテナが海に沈んでいますが、このような大きな海洋ゴミは、海運にも影響を与えているでしょう。
ロボットはゴミを識別し、海から取り除くこともできますが、そこには限界もあります。
■河川のパトロール
ゴミを食べるアクアボットの導入が限定されているのは、主に資金不足によるものですが、優れた例もいくつかあります。 まずIEEE Spectrumが「川のルンバ」と呼んでいるのがJellyfishbotです。これは、カリフォルニア州のロングビーチのような地方自治体が活用しています。
もう一つの例が、オランダの非営利団体であるThe Ocean Cleanupが開発したRiver Interceptorです。これは川に停泊しており、ゴミが流れてくると、浮遊ブームに沿って太陽光駆動のボットの口に誘導され、ベルトコンベアーで河川から取り除かれます。
これら2つのボットには、いくつかの相違点があります。Jellyfishbotは、比較的小型なので車のトランクに収まり、リモコンで操作できます。一方、River Interceptorは、はるかにサイズが大きく、標準的な輸送用コンテナの約2倍の長さと幅があります。
しかし、両者ともに、海のゴミのほとんどは川から流れてくるという重要な問題に取り組んでいるのです。すなわち、河川環境からゴミを取り除くことは、より大きな効果をもたらすことになります。
■急速に進歩する技術
また、アクアボットの開発は課題に直面しています。まず、すべてのゴミが水面に漂っているわけではありません。水底に沈んでいるものもあれば、水面下を漂っているものもあります。水面上を移動するロボットでは、それらを捕らえることができません。
もう1つの課題は、水中では視界が限られることです。海面下で活動するロボットは、海洋ゴミを見つけるのに苦労していることでしょう。大半の水中ゴミロボットの試作品は、人間のオペレーターに頼ってゴミを識別しています。しかし、AIベースの自動ゴミ識別手法に関する重要な研究が行われていることも事実です。
ほとんどの海洋ゴミロボティクスのプロジェクトは、パイロットの段階にあります。IEEEシニアメンバーのWang Gang(ワン・ガン)氏は次のように述べています。「大規模な海洋ゴミ除去の問題を解決するには、まず核心的な課題を明らかにする必要があります。ほとんどのプロジェクトが水面上のゴミに取り組んでいますが、それは氷山の一角に過ぎません。ほとんどのゴミは、漁網のように水中にあるのです。」
■海をきれいにするためにアクアボットは必要か?
人間が海に捨てたゴミの量は計り知れないほど膨大です。また、その量は2040年までに四倍に達するとの試算もあります。
ロボットは高価なものだと、IEEEメンバーのPaulo Drews(パウロ・ドリューズ)氏は指摘しています。メンテナンスをしなければなりませんし、オペレーターも必要です。ゴミを収容する場所も必要になります。
「水中ロボットを使ってゴミを処理することは、社会にとって重要な進むべき道です」とDrewsは述べています。「しかし、この技術が向上するにつれて、複雑なコスト構造について考慮する必要があります。ロボットは役に立ちますが、人間はできるだけ早期に水域におけるゴミの量を削減することが求められています。」
■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,800を超える国際会議を開催しています。
詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。
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