日銀の今回の緩和を名付けてみよう──それは「永久緩和」
額から金利にシフトしたのはいいが、それは金融緩和の限界から抜け出すためであるにもかかわらず、緩和縮小と思われないため、市場の解釈にビビって、長期金利をゼロとし、強力な時間軸政策を復活させたため、出口を抹殺してしまったのである。
したがって、これは絶対に緩和拡大である。もし、以前はいつか出口を目指すと日銀が真面目に思っていたのならば。
もう一つの解釈は、2%まで緩和を続けるのならば、出口はない、それは現体制が崩壊したときだ、だから、どうせ現在の枠組みでは出口はない、だから、今日、出口がなくなったのが明白になったからと言って、何も変わっていない、というものだ。
これは確かにその通りだが、一つだけ問題がある。現体制が崩壊したときに、次の体制では、出口を目指す可能性があったわけだが、その場合の具体策は、金利ターゲット、もしくはイールドカーブコントロールしかなかったからだ。
すなわち、現体制の崩壊後の選択肢を、現体制によって費消されてしまい、次の策がなくなってしまったのだ。
残されているのは、あからさまに、長期金利ターゲットをゼロから0.2%にします、という金利引き上げ、最も直接的な引き締めしか選択肢が残されていないからだ。
国債暴落まで続く
そして、これはインフレが起きない以上、財政破たんあるいはその懸念による国債暴落のときしか、実行することはできないだろう。
したがって、現在の枠組みは、財政破たんまで継続することが決まったのである。
こうなると、ヘリコプターマネーを否定したところで、結果は同じ、財政破たんによる国債暴落までは、過剰金融緩和の病から抜け出せない、ということなのだ。
私は、今回のレジームチェンジを高く評価するが、ちょっとしたマーケットへのサービス(あるいは恐怖)のために、これは追加緩和となってしまったし、その追加緩和とは、これまでのどの追加緩和よりも強烈で、すなわち、最も後戻りができない状況に追い込まれてしまったということだ。これまでの追加緩和は、木内委員がいうように量をもとに戻せば済んだからだ。それでも金利を低く維持すればよかったからだ。
いまやその道は存在しない。
永久緩和。
日銀は最後の河を渡ってしまったのである。
もちろん、理論的には橋を渡すことはできる。
長期金利ターゲットを引き上げる勇気を持つことだ。
それができなければ、永久緩和。
それが新しい現実だ。
*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です
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