- HOME
- コラム
- From the Newsroom
- 古田敦也は最高の野球ファンだった
コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
古田敦也は最高の野球ファンだった
米メジャーリーグでは今月2日、サンフランシスコ・ジャイアンツがワールドシリーズ制覇を決めました。ジャイアンツのイメケン長髪エース・リンスカムや、広島カープでも活躍したテキサス・レンジャーズのルイス投手など、日本の野球ファンにとっても見どころの多いシリーズだったと思います。
もちろんアメリカ国内の注目は非常に高かったようです。本誌11月10日号のパースペクティブにも、中間選挙を争う政治家たちがワールドシリーズと書かれた野球ボールに押しつぶされる様子を描いた漫画が掲載されています。アメリカでの野球人気は相変わらず根強いということでしょう。
一方の日本では、中日ドラゴンズと千葉ロッテマリーンズが日本シリーズを戦っている真っ最中。ただテレビでの全国中継がない試合があるなど、プロ野球ファンとしては少し寂しい状況になっています。
とはいえ、この時期になってもまだまだ野球熱が冷めない野球ファンは両球団のファン以外にもたくさんいます。そしてこのプロ野球人気が今も続く背景には、各球団や選手会などが以前からファンサービスに力を入れてきたという地道な努力も一因としてあると思います。
私もドラフト会議の動向や各球団が行う補強など、ひいきのチームがシーズンを終えた今も野球ニュースを欠かさずチェックする1人。そんななか、元ヤクルトの古田敦也さんが朝日新聞出版から発売した『フルタの方程式 バッターズ・バイブル』の発売記者会見に参加する機会をいただきました。
古田さんといえば、史上初の選手によるストライキに発展した04年のプロ野球再編問題で、選手会会長として経営者側と真っ向から戦った人物。当時、シーズン中にもかかわらずオーナー陣との交渉に堂々と挑んでいた姿を覚えている人も多いのではないでしょうか。ファンサービスを重視する現在の流れも、この事件が1つのきっかけになったと言えると思います。
そんな古田さんの新著は、昨年発売された『フルタの方程式』(捕手編)の第2弾ということなのですが、今回はバッティングの技術論が初心者にも分かりやすく解説されています。古田さんが言うには、現役時代も「バッティングは引退するまで毎日が試行錯誤」だったそうで、「最後まで結論は出なかった」といいます。
つまりバッティングとは、プロで活躍する選手にとってもそれほど難しいということ。休日には草野球チームで汗を流す私も(まだ選手が9人そろっていないので練習ばかりですが)、この本を読んでもっと勉強したいと思います。
ところで記者会見では、同日に行われたドラフト会議についても質問が飛びました。現場を離れて外からプロ野球を見る立場になった今、古田さんはドラフトをどう見たのか。すると、「やっぱりヤクルトに誰が入るのかに一番興味がある」との返事。「ひいきのチームを持たないと面白くない。どこかのチームや選手を応援するのが、正しい見方だと思う」
ああ、やっぱり古田さんも私たちと同じ野球ファンの1人だったんだ、と妙に納得してしまいました。そしてそんなファンの気持ちを分かってくれる古田さんだからこそ、あれほど熱く日本プロ野球を守るために戦ってくれたのだと改めて感じることができました。
会見後、会場となった三省堂書店神田店でサイン会が行われたのですが、雨にも関わらずたくさんの人たちが行列を作っていました。やはり古田ファン、野球ファンは今も健在のようです。
取材を終えて帰ろうとしていた私の近くで、古田さんにサインをもらった1人の子供が母親の元に駆け寄って満面の笑みで報告していました。「『野球うまそうだな』って言われた!」。古田さん、日本の野球人気もまだまだ続きそうですよ。
――編集部・藤田岳人
この筆者のコラム
COVID-19を正しく恐れるために 2020.06.24
【探しています】山本太郎の出発点「メロリンQ」で「総理を目指す」写真 2019.11.02
戦前は「朝鮮人好き」だった日本が「嫌韓」になった理由 2019.10.09
ニューズウィーク日本版は、編集記者・編集者を募集します 2019.06.20
ニューズウィーク日本版はなぜ、「百田尚樹現象」を特集したのか 2019.05.31
【最新号】望月優大さん長編ルポ――「日本に生きる『移民』のリアル」 2018.12.06
売国奴と罵られる「激辛トウガラシ」の苦難 2014.12.02