コラム

『24』『LOST』最終回に怒る人、喜ぶ人

2010年05月26日(水)18時38分

 5月23~24日、アメリカの人気ドラマ『24』と『LOST』がついに最終回を迎えた。すでにネット上では、ファンや批評家の間で賛否両論が巻き起こっている。どんなに素晴らしい最終回でも、ファンからは多かれ少なかれ失望の声が上がるものなので、客観的な評価を下すのは時間がかかるかもしれない。

 でも視聴率は、どちらも放送局が期待していたほどではなかった。23日放送の『LOST』最終回の視聴者数は1360万人。08年2月以降では最高だったものの記録的な数字ではなかった。一方、24日に放送された『24』の最終回は890万人どまりで、同日最終回が放送された人気コメディー『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』(1480万人)や『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』(1540万人)に遠く及ばなかった。

 しかし明るい側面もある。両シリーズの主演キャストにとっては、長年のシリーズから解放され、新たな作品に挑むチャンスだ。1シーズン22話が基本のアメリカのテレビドラマは、1年間のうち10カ月近くを製作に費やす場合が多い。とりわけ『LOST』や『24』のように撮影がハードな作品だと、映画や舞台の仕事を平行して行うのは至難の業だ。現に、『24』の映画化の話は何年も前からあったが、シリーズ継続中は出演者もスタッフも手一杯で、ずっと先延ばしになっていた。シリーズ終了が決まった頃から映画版の動きが目立つようになり、現在は番組プロデューサーのハワード・ゴードンやジャック・バウアー役のキーファー・サザーランドが脚本作りを進めているらしい。

『LOST』のキャストも、今後は映画で活躍しそうだ。ケイトを演じたエバンジェリン・リリーは、来年公開予定のSFアクション『リアル・スチール』でヒュー・ジャックマンと共演する。一方、ジャック役のマシュー・フォックスは、コミック原作のアクション映画『ビリー・スモーク』に主演する予定だ。「もうテレビは十分。『LOST』は自分にとって素晴らしいチャンスだったけど、たった一つのプロジェクトにあれほど長い時間かかわるのはもう嫌だ」と、フォックスは4月にあるインタビューで語っている。

無理もない。彼らテレビ俳優たちは長い撮影期間中、体型を維持し、怪我や病気に用心し、撮影が長引いてプライベートを犠牲にする羽目になっても我慢するしかない。いくら優れた作品でも、そんな日々が延々と続くと思うだけでどんよりするはずだ。

その点、『24』を8シーズンも続けてきたサザーランドはさすがに心がけが違う。いったん撮影が始まればストイックな生活に徹する......わけでは決してなく、「10カ月もおとなしくしてられるか!」とばかりに、ジャック・バウアーもうらやむような破天荒ぶりを時おり披露してきた。英タブロイド誌によれば、05年12月には泥酔したあげく、見た目が気に食わないと言う理由で宿泊先のホテルのクリスマスツリーをなぎ倒した。07年には飲酒運転で禁固48日の実刑判決を受け、同年のクリスマスと新年は獄中で過ごした(この年は運よく、米脚本家組合のストライキの影響で『24』の放送が延期になった)。今年に入ってからも、こんな格好でトーク番組に出たり、ロンドンのクラブから上半身裸で追い出される姿をタブロイド誌で報じられたり。映画製作を控えるなか、番組スタッフもまだ安心できない?

----編集部・佐伯直美

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story