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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
ユーロ危機を予測していたフリードマン
EU(欧州連合)首脳は12日、債務危機の焦点になっているギリシャを支援すると発表した。ヨーロッパの銀行はギリシャを始めとする欧州の落ちこぼれ国(PIIGS=ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)にたくさんお金を貸していて、破綻されては困る。だがもっと恐ろしいのは、PIIGS諸国のどこかがユーロから離脱してしまうことだ。そうなればユーロの信認は失墜するだろうし、心血を注いできた欧州統一の理想は破れてしまう。
突然のユーロ危機に市場は不意を突かれたそうだ。皮肉なことに、金融危機ですべての国が凹んでいた時のほうがユーロは安泰で、今回の危機はドイツなど一部の国の景気が上向き出したことが原因で表面化したという(詳しくは2月17日発売の本誌参照)。
だが、ユーロ危機は予測されていた。ノーベル賞経済学者でマネタリストの故ミルトン・フリードマンは、99年のユーロ発足前から「ユーロ圏は最初の深刻な景気後退を乗り切れない」「寿命は15年」と言っていた。加盟国は通貨主権を欧州中央銀行(ECB)を委ね、独自の金融財政政策がとれなくなるからで、イギリスがユーロに参加しなかったのもそのためだ。またフリードマンは01年、90年代から高成長を続けたアイルランドについて、金融を引き締めるべきなのにユーロに縛られてできなかったと指摘していた。アイルランドではその後、不動産と金融のバブルが起こって07年に破裂する。金融危機後は市場原理主義者として悪の権化にされてしまったフリードマンだが、やっぱり巨人は巨人だ。
それにしても、ただでさえドルへの不信が募っている時にユーロのこのつまづき。中国のようなお金持ちは、いったい資産を何で運用したらいいのか改めて思案を始めていることだろう。中国が提案したIMF(国際通貨基金)の特別引出権(SDR)を世界の基軸通貨にする案や、ロシアが主張する世界共通通貨、日本が提案するアジア共通通貨などの構想はどうなるのだろうか。ユーロに欠陥があるならこれらもダメなのか、それともドルやユーロに代わる未来通貨としてますます重要になるのだろうか?
--編集部・千葉香代子
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