iPhone不買運動、「日の出」を連想させるポスターの罵倒...中国政府「非公認の愛国」が暴走する理由
「'愛国'はビジネスではない」
中国政府はこうした草の根ナショナリズムの全てを認めているわけではない。
iPhone売上が減少するきっかけになった「公務員の使用禁止」について、中国外交部はこれを否定した。
そればかりか、暴走した'愛国'に制裁が下されることもある。
南京のショッピングモールから赤い丸のロゴを外させたブイロガーは、国営放送CCTVのニュースで「有害な活動」と批判されただけでなく、過激な言動は収益化を目的としたビュー稼ぎと断定されて「'愛国'はビジネスではない」とも酷評された。
これは中国では社会的な封殺に近い。
それ以外にも、香港の住民を「犬」と呼んだブイロガーがWeiboのアカウントを凍結されたり、今年1月の能登半島地震を「日本への天罰」とSNSに書き込んだTVコメンテーターが番組出演を停止させられたりしたこともある。
中国の場合、これらの対応は個別の組織の独自の判断というより、共産党の意向が働いた結果とみた方がよい。
何が'愛国'かは党が決める
中国政府はこれまでナショナリズムを鼓舞し、コロナ禍でも「外国の責任」を強調した。その中国政府自身が草の根の過剰なナショナリズムを警戒するのは、一見すると矛盾したようにも映る。
しかし、習近平体制が先進国との対決を演出したり、強権的な統治を正当化したりするツールとして愛国やナショナリズムを用いているなら、そこに大きな矛盾はない。
習近平国家主席は昨年6月、「'愛国'の真髄は国とともに共産党や社会主義も愛すること」と述べた。ここからは中国政府がナショナリズムを、あくまで「共産党体制への奉仕」を大前提にしていることがうかがえる。
言い換えると、「何が'愛国'か」を判断するのは共産党ということだ。だから、いわば官製ナショナリズムをはみ出して勝手に'愛国'を叫ぶのが許されなくても不思議ではない。
実際、昨年11月に習近平がアメリカのバイデン大統領と会談して貿易問題を協議した後、CCTVをはじめ国営メディアは反米のトーンを急に弱め、右派コメンテーターやブイロガーの多くがそれに歩調を合わせた。
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