コラム

史上初の米下院議長解任は「同担拒否」の結果...解任劇に見るトランプ支持者の近親憎悪

2023年10月05日(木)14時00分

コップの嵐はどこまで広がる

繰り返しになるが、この議長解任劇はトランプ支持者同士の近親憎悪、あるいはいわゆる「同担拒否」に過ぎない。

しかし、問題はそれでは済まない。

新議長の選出が難航すれば、予算の「つなぎ法案」の期限がくる11月17日、政府機関が閉鎖されるリスクはさらに高まる。

さらに、共和党下院議員の誰が新議長になろうとも、今回のゲーツらのやり方を見た時、その意に沿わない決定をすればマッカーシーの二の舞になりかねないという心理的ブレーキもかかりやすい。

その一方で、今回の騒動はトランプ支持者の求心力低下を印象づけた。

肝心のトランプは、自分の訴訟で忙しいからか、支持者同士の争いにほとんど発言さえしなかった。

それはトランプが暗黙のうちにゲーツを支援したともいえるが、逆にマッカーシー一派にしてみれば「トランプは支援してくれなかった」となる。

つまり、今回の議長解任はアメリカがさらなる混迷に突っ込む入り口にもなりかねないのだ。それがウクライナ戦争を含む世界情勢を大きく左右することはいうまでもない。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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