コラム

日銀のYCC柔軟化~インフレ見通しの上方修正が政策修正を後押し~

2023年10月31日(火)18時47分

今後の日銀政策の展望

そして、YCCの枠組み内での更なる修正の選択肢は、もはや限定的とみられる。次の政策対応は、1%の長期金利を目途に制御する措置を残しながら、現行のマイナス金利をゼロ金利政策に修正する、という格好で新たな政策フレームが提示されるのではないか、と思われる。

7月以降、植田日銀が進めているYCCの柔軟化(事実上の形骸化)のプロセスは、筆者が従前想定していたよりもやや早いペースで進んでいる。一方、日本では、30年ぶりの大幅な賃上げが、2024年まで続く動きが散見されるなど、インフレ期待が高まり、2%インフレの安定的な実現の可能性が高まっている証左も増えているのは事実である。

金融市場への影響

筆者の想定よりやや日本銀行の動きは早いが、最近の日本のインフレを取り巻く動きを踏まえると、植田日銀の対応が早過ぎるとまでは言い切れないように思われる。今回の日銀の政策修正が、株式市場などの金融市場に何等かの影響を及ぼす可能性は低いだろうと、筆者は考えている。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書が2025年1月9日発売。

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