コラム

ロシアW杯を見なかったカタルーニャ人が抱くW杯出場の夢

2018年08月30日(木)18時30分

100年以上前から「カタルーニャ代表」がある

実はカタルーニャには、1902年に創設されたれっきとした選抜チーム「カタルーニャ代表」もあり、創設以来、他国代表やクラブチームと200以上の試合を行っている。世界トップクラスのサッカークラブで活躍しているカタルーニャ人選手や監督を呼び戻してカタルーニャ選抜を組めば、W杯で優勝可能なチームが出来上がるともささやかれている。

スペインがW杯を制した2010年南アフリカ大会のスペイン代表チームのレギュラー11名中6名が、また今回は4名がカタルーニャ出身の選手だった。電撃カウンターの連続で日本を葬り去るなどして、3位となったベルギーのルベール・マルティネス監督も実はカタルーニャ人で、豊富な人材が揃う。

そして、なによりもカタルーニャにはバルサがある。フランコ独裁政権(1939~75年)下でカタルーニャ文化、カタルーニャ語、カタルーニャ州旗などが禁止されるなか、バルサは元来のカタルーニャ語での英語風表記のFutbol Club Barcelonaから、Club de Fútbol Barcelonaと名称をスペイン語化されたが、チームの存続は許された。

バルサはフランコ独裁政権への抵抗のシンボルとなり、フランコ将軍が肩入れしたといわれるレアル・マドリードと宿命のライバルになった。多くのカタルーニャ人は、ホームスタジアムであるカンプ・ノウでカタルーニャ州旗の代わりにバルサの旗をふった。自分たちのアイデンティティーを再確認できる唯一の公の場だった。

現在でもバルサは「サッカーチーム以上の存在」と言われ、カタルーニャ人の心のよりどころとして欠かせないものとなっている。

カタルーニャでは、スペイン国内リーグやUEFAチャンピオンズリーグのバルサの試合は、W杯のスペイン戦より遥かに盛り上がる。最大観客収容数約10万人という欧州最大のスタジアムはしばしば満員になり、地元のバルはカンプ・ノウに入りきれない人たちでごった返し、テレビがない通常のレストランには閑古鳥が鳴く。

グアルディオラがカタルーニャ代表を率いる日

バルサでプレーし、引退後に監督として就任直後バルサに3冠をもたらし、チャンピオンズリーグで2度の優勝を成し遂げた名将ジュセップ・グアルディオラの指揮官としての手腕は、あまりにも有名だ。彼のサッカーは、現代サッカーの主流となっているといっても過言ではない。

ドイツのバイエルン・ミュンヘンを経て、2016年にはイングランドのマンチェスター・シティの監督に就任し、2年目にプレミアリーグを制した。グアルディオラ監督は昨シーズンのプレミアリーグ決勝戦で、現在も投獄中のカタルーニャの「政治犯」のための黄色いリボンを付け続けて試合を指揮した。

プロフィール

森本 徹

米ミズーリ大学ジャーナリズムスクール在学中にケニアの日刊紙で写真家としてのキャリアを開始する。卒業後に西アフリカ、2004年にはバルセロナへ拠点を移し、国と民族のアイデンティティーをテーマに、フリーランスとして欧米や日本の媒体で活躍中。2011年に写真集『JAPAN/日本』を出版 。アカシギャラリー(フォトギャラリー&レストラン)を経営、Akashi Photos共同創設者。
ウェブサイト:http://www.torumorimoto.com/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラジルのコーヒー豆輸出、10月は前年比20.4%

ビジネス

リーガルテック投資に新たな波、AIブームで資金調達

ワールド

ナイジェリアでジェノサイド「起きていない」、アフリ

ワールド

世界で新たに数百万人が食糧危機に直面、国連機関が支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story