日本にも憤る市民、米兵の悲しげな表情... 『Little Birds』が伝える加工なきイラク戦争
結局、イラク戦争とは何だったのか。アメリカが侵攻の大義として掲げた大量破壊兵器は見つからなかった。フセイン政権は確かに独裁だったが、求心力を失ったイラクには武装勢力が跋扈(ばっこ)して、イスラム国(IS)など多くのイスラム過激派の誕生に結び付く。ある意味で今の世界の分断の大きなきっかけだ。
その瞬間を記録した本作は、客観中立を装うテレビとは根本的に違う映像と編集だ。いま観ても決して色あせていない。なぜならその後の世界を規定する要素が、この作品にはいくつも見えているからだ。
『Little Birds─イラク 戦火の家族たち─』(2005年)
監督/綿井健陽
出演/アリ・サクバン、ハディール・カデム
<本誌2021年2月9日号掲載>
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