コラム

大相撲「入日本化」提言は一体なんなのか?

2021年04月28日(水)17時00分
大相撲、力士

Issei Kato-REUTERS

<大相撲は、外国出身力士が「ニュウニホンカ」することを目指せ、と有識者会議が提言を出した。なぜこんな造語なのか。どんな意図があるのか>

なんとも不気味な言葉が目に留まった。入日本化。

ニュウニホンカと読むようだが、「大相撲の継承発展を考える有識者会議」が4月19日に日本相撲協会に提出した提言書で用いられている。

同会議は相撲協会の八角理事長の諮問機関として2019年に設置された。契機となったのはモンゴル出身の元横綱、日馬富士による傷害事件などだという。

報道だけでは詳細不明だったので、50ページ弱の提言書に目を通すと、こんなことが書いてあった。

大相撲の前には二つの道がある。一つは国際化、脱日本化の道で、柔道が進んできた道に似ている。もう一つは脱日本化しない道で、こちらは剣道が進んだ道に似ている。

そして、大相撲は後者を選ぶべきであり、多国籍化に伴う変容を受け入れるのではなく、外国出身力士が「入日本化」することを目指すべきという図式だ。

つまり、「入日本」は「脱日本」の反対語として造られた言葉だった。

なぜこんな言葉を用いたかと言えば、強制や同化を連想させる「日本化」という言葉をあえて避けたからとも書かれていた。外国出身力士による「入日本化」はあくまで「内発的な意思」によるものであり、「日本文化」の押し付けではないという整理のようだ。

正直なところ、それが「同化」でないというのは質(たち)の悪い言葉遊びにしか思えなかった。

しかも、肝心の「日本文化」とは一体何かと言えば、その内実に関する分かりやすい説明はない。

「大多数の日本人が自然に受け入れてきた大相撲の神事に由来する古典的な伝統・精神・技法」などの記述があるが、「自然に」と言われても実際の中身はブラックボックスだ。「日本人」の私にもよく分からない。

ヒントになりそうな箇所もあった。ハワイ出身の高見山が、親方となった後に東関部屋で掲げていた「十の心」という標語だ。

明らかに肯定的な文脈で紹介されていて、「①おはようという親愛の心」から「⑩嘘をつくなという正直な心」まで続く。「大相撲が強調してきた礼の精神に通じる」ものであり、高見山の例はまさに大相撲を通して「入日本化」した姿だという説明がされている。

プロフィール

望月優大

ライター。ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。著書に『ふたつの日本──「移民国家」の建前と現実』 。移民・外国人に関してなど社会的なテーマを中心に発信を継続。非営利団体などへのアドバイザリーも行っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政府、シリアに中国通信技術への依存中止求める=関

ビジネス

ワーナー・ブラザース、第4四半期赤字が予想上回る 

ワールド

東京コアCPI、2月は+1.8% 制度要因で202

ビジネス

ネトフリ、ワーナー買収撤退意向 「パラマウント案に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story