コラム

自分がどうしたいか、「決め方」を知らない子供たち...未来の可能性を広げる取り組み始まる

2022年08月03日(水)10時10分

実際に「ミライの選択」を提供した高校の生徒からは、「部活を辞めるか続けるかで悩んでいた時に、学んだ内容が生かせた」との反響があった。また、保護者や教師との二者面談、三者面談において、従来は生徒が何も言い出さずに対話することが難しいケースもあったが、「ミライの選択」で生徒が自分の考えや希望を反映した表によって「子どもたちとコミュニケーションを取りやすくなった」と大人からも好評だった。

2021年度は1000人程度を対象として実施したが、2022年度は既に4000人規模での実施が決まった。対象校の地域も北海道や新潟、和歌山、静岡など全国的に広がりが出てきているそうだ。

220729mnm_kwj04.jpg

(河合塾提供)

未来の材料を集める

一方の「ミライの洞察」は思考を自由に拡散させていき、未来についての想像を膨らませるプログラムだ。未来を考え、想像するために、身近なニュースなど未来の「素材」を集めて組み合わせ、未来のアイデアを創発していく。「料理に例えると、決まったレシピに沿って作るのではなく、使う材料の選定段階から自分たちで考えて未知の食べ物を作る」(山本さん)イメージだという。

テキストをもとに、自分の価値観や進路の考えを深めていく「ミライの選択」と違い、「ミライの洞察」は個人とグループのワークを繰り返しながら、未来の社会を想像し、アイデアを発展させていく。

未来学でも前提となる、「起こりうる」未来や「起こりそう」な未来の概念を知り、その未来が「良いか悪いか」といった評価軸で考えていく訓練を、クラスメートと共に行っていく。

220729mnm_kwj05.jpg

「ミライの洞察」のテキスト(筆者提供)

「風が吹けば桶屋が儲かる」の思考をまねてマインドマップを作ってみようと促し、「ミライへ思考をジャンプさせる」コツの体得につなげていくような演習もある。自分たちが大人になる頃の世界を想起するために、AI(人工知能)やロボット、宇宙、再生医療といった未来的なテーマのニュースを意識的に収集する癖をつけてもらう狙いだ。

貴重な「ミライ」の学習経験

「ミライの選択」は「社会に出てからも通用するスキルや考え方を生徒に学んでほしいが、どう授業や学校行事に組み込めばいいのかわからない」といった課題を感じている学校に向いているという。社会人の間でも「学び直し」のニーズが高まっている今、何を修得するか、どの道に進むかを主体的に「決める」訓練を中高生のうちに腰を据えて学べる機会は貴重な経験になりそうだ。「ミライの洞察」は決める前の選択肢を広げるトレーニングに最適だそうだ。

河合塾のミライ研はこのほか、「ミライの科学」などのプログラムも用意している。山本さんは「未来を素材にして発想を広げて学ぶことで、常識を疑ってみたり、『ひょっとしたら他にも選択肢があるかもしれない』と新たな可能性を探索したりする生徒が増えたらうれしい」と話した。

プロフィール

南 龍太

共同通信社経済部記者などを経て渡米。未来を学問する"未来学"(Futurology/Futures Studies)の普及に取り組み、2019年から国際NGO世界未来学連盟(WFSF・本部パリ)アソシエイト。2020年にWFSF日本支部創設、現・日本未来学会理事。主著に『未来学』(白水社)、『生成AIの常識』(ソシム)『AI・5G・IC業界大研究』(いずれも産学社)など、訳書に『Futures Thinking Playbook』(Amazon Services International, Inc.)。東京外国語大学卒。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

加石油大手幹部、ベネズエラ石油再建巡り対米支援を提

ワールド

トランプ氏のカード金利上限要求、JPモルガン首脳が

ビジネス

NY外為市場=円、対ドルで24年7月以来の安値 財

ビジネス

米国株式市場=反落、金融株主導 トランプ氏のクレジ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 3
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が話題に 「なぜこれが許されると思えるのか」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 8
    「お父さんの部屋から異臭がする」...検視官が見た「…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story