スタバを迎え撃つ中華系カフェチェーンの挑戦
上海の瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)。2017年に創業し、猛烈な勢いで店舗数を拡大している。2023年第2四半期における中国内売上額ではスターバックスを上回った(写真=2023年11月、筆者撮影)
<コーヒー文化が中国に根づき、上海は店舗数急増>
5年ぶりに訪れた上海ではカフェがすごいことになっていた。5年前に行ったときにもスターバックスはすでに進出していたが、この5年の間に中国の地場企業が始めたカフェチェーンがものすごく増えた。街を歩く人を見ても、コーヒーの入った紙カップを持ち歩いている人が多い。
ひと昔前の中国を知っている身からすると、まさに隔世の感がある。1990年代の北京にはそもそもコーヒーを飲める店がほとんどなかった。コーヒーが飲みたければ外資系ホテルのラウンジで高いコーヒーを飲むか、あるいはネスカフェを買ってきて自分で淹(い)れるしかなかった。
ただ、なぜかネスカフェの空き容器を多くの中国人が持っていた。それを持ち歩いてお茶を飲むマグカップとして使うのだ。朝たっぷりの茶葉をその中に入れてお湯を注ぎ、それにお湯をつぎ足しながら一日じゅうすする。当時、コーヒーが好きな中国人は少なかったので、彼らは空き容器を手に入れるためにわざわざネスカフェを買ってインスタントコーヒーを我慢して飲んだのかもしれない。
北京では中国茶が飲める喫茶店もきわめて少なかった。中国人にとってお茶はオフィスや会議室や家で飲むものであって、わざわざそのためにお金を払うようなものではなかったのである。
中国でカフェ文化を育てた米スターバックス
日本にはもともと喫茶店がたくさんあったし、1980年にドトールコーヒーの第1号店が開業して以来、日本発のカフェチェーンもいくつか存在した。アメリカ・シアトルで産声を上げたスターバックスコーヒーはアメリカとカナダで店舗を展開した後、北米以外の最初の出店先として日本を選んだが、日本であれば確実にお客を集められるとの目算があっただろう。スターバックスの日本での第1号店は1996年に東京・銀座に開業し、2002年3月末には345店舗にまで拡張した。
一方、スターバックスが中国・上海に第1号店を出店したのは1999年であったが、もともと喫茶店でコーヒーを飲む文化がなかった中国では、スターバックスが浸透するのにはけっこう時間がかかった。スターバックスは中国ではまず外国生活経験がある富裕な中国人や外国人旅行者を主なターゲットにしたのだと思う。出店先は富裕層や外国人が多く往来する大都市の繁華街に限られていた。顧客として富裕層と外国人を想定していたことは価格にも表れていて、どの商品も日本の1.5~2倍ぐらいの価格設定で、スターバックスで普通のコーヒーを買うのに必要な額がラーメンより高かった。
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