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無差別殺傷事件は6月に多発... 日本がいまだ「自爆テロ型犯罪」に対して脆弱な理由
そもそも、動機の解明によって犯罪を防ごうとする「犯罪原因論」は、海外では人気がない。というのは、現在の科学水準では、犯罪の動機を特定することは困難であり、仮に特定できたとしても、その動機を取り除く方法を開発することは一層困難と思われているからだ。
海外で人気があるのは、場所に注目する「犯罪機会論」である。それは、犯罪原因論のように、「なぜあの人が」という視点から動機をなくそうとするのではなく、「なぜここで」という視点から犯行のチャンスをなくそうとする。つまり、動機があっても、犯行のコストやリスクが高く、犯行によるリターンが少なければ、犯罪は実行されないと考えるわけだ。
人の性格や境遇はバラバラなので、犯罪の動機も人それぞれだ。そのため、動機をなくすための治療や支援が、犯罪者の特性にピッタリ合えばいいが、ミスマッチの可能性は高い。これに対して、犯罪の機会は環境を改善すればするほど減っていく。つまり、努力に比例して確実に犯罪を減らせる。
こうした視点から、海外では、同じ予算、同じ人員、同じエネルギーなら、犯罪原因論ではなく、犯罪機会論に投入すべしというのが、治安関係者のコンセンサスだ。それは、納税者からの強いリクエストからもたらされたものである。
「眠れる警察官」で暴走車テロを防ぐ
犯罪機会論は「自爆テロ型犯罪」にも有効である。犯罪機会論が出す「処方箋」はシンプルだ。その場所を「入りにくく見えやすい場所」にするだけである。
例えば、猟銃を使用した殺傷事件を防ぐには、警察署、猟友会、射撃場など、所持者の自宅以外の場所で管理することが有効である。猟銃のある場所を「入りにくい場所」にするからだ。猟銃を取りに行く間に、犯罪企図者がクールダウンすることも期待できる。また、猟銃にGPSをつけることも効果的だ。これは、猟銃のある場所を「見えやすい場所」にする工夫にほかならない。
ニース、ベルリン、ロンドン、バルセロナ、ニューヨークで起きたように、「車両突入テロ」がテロの主流となりつつある。こうした暴走車によるテロを防ぐには、進入路にボラード(車止め)を設置することが有効だ。犯罪機会論的に言えば、歩行者がいる場所を、自動車が「入りにくい場所」にするわけだ。欧米では、道路に埋め込んでリモコンで昇降させられる「ライジングボラード」が多数設置されている。
それだけの予算をかけることが難しい場合もあるだろう。その場合でも、「ハンプ」なら安価で設置できる。ハンプ(英語で「こぶ」の意)とは、車の減速を促す路面の凸部(盛り上がり)のことだ。
ハンプは、「眠れる警察官」とも呼ばれ、オランダで生まれたボンエルフ(オランダ語で「暮らしの庭」の意)を起源とする。ハンプが道の途中にあると、車体が持ち上がりそして落ちる。そのため、恐る恐るゆっくり越えなければならない。さもなければ、車が跳ね上がり、天井に頭をぶつけてしまう。したがって、ハンプを設けておけば、全速力で行う「車両突入テロ」を難しくできる。
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