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人権問題に目をつむり、W杯に賛辞...小国カタールに、なぜ欧米はここまで「甘い」?
今年1月、ジョー・バイデン米大統領はホワイトハウスでタミーム首長と会談し、カタールを北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要同盟国と位置づけた。両国はW杯の安全と成功を確保するため緊密な省庁間協力を拡大することを約束した。アントニー・ブリンケン米国務長官が大会期間中、ドーハを訪れ、米国対ウェールズ戦を観戦する熱の入れようだ。
米国はアフガニスタンから人々を安全に移送する最前線に位置するカタールに負うところが大きい。中東の平和と安全保障を推進するため同国との協力関係を強化している。カタールは湾岸地域での米国の最も緊密な軍事パートナーの一つで、アル・ウデイド空軍基地には18カ国を受け入れる西側の航空作戦センターもある。
「ワン・ラブ」腕章着けたドイツ内相のささやかな抵抗
史上最も高額な2200億ドル(約30兆円)をかけたW杯カタール大会の費用は前回18年のロシア大会の約20倍と言われる。8万人収容のルサイルスタジアムで開かれる閉会式にはバイデン大統領代表団も出席。カタールが労働者の権利拡大、労働法の施行、人身売買撲滅に向け前進していることに米国がお墨付きを与える格好だ。
人権問題に厳しい欧州も背に腹は代えられない。ウクライナ戦争でロシア産エネルギーからの脱却を進めるため、欧州はアフリカの天然ガス開発に拍車をかける。カタールは世界一、二を争う液化天然ガス(LNG)輸出国。輸出先の8割は韓国、インド、中国、日本などのアジア諸国だが、パイプラインと違って持ち運びできるカタールのLNGに欧州も熱視線を注ぐ。
ドイツのナンシー・フェーザー内相(社会民主党)は日本対ドイツ戦をスタジアムで観戦、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長の隣で性的マイノリティや人権への寛容を象徴する「ワン・ラブ」腕章を着けてささやかな抵抗を示した。しかし大会をボイコットしなかったことがドイツの苦しいエネルギー事情を物語る。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領も準決勝のフランス対モロッコ戦を観戦し、カタールのW杯を支援した。欧州連合(EU)欧州議会のエヴァ・カイリ副議長(44)=ギリシャ選出=ら4人が起訴された汚職スキャンダルもカタールのロビー攻勢の激しさを浮き彫りにした。
インファンティーノ会長はカタール大会がキックオフする直前、「西側は他国に道徳的教訓を与える立場にない」と、自分に甘く他人に厳しい西側特有のダブルスタンダードと偽善を非難した。