- HOME
- コラム
- 欧州インサイドReport
- 「ジョコビッチは愚か者だ」豪入国拒否問題で英名門紙…
「ジョコビッチは愚か者だ」豪入国拒否問題で英名門紙がスター選手をバッサリ
オーストラリアは外国人に入国前のワクチン接種を義務付けている。地元の公共放送ABCによると、大会に参加する選手や関係者計約3500人のうち26人がワクチン接種の免除を申請し、認められたのはジョコビッチ選手ら「ほんの一握り」に過ぎない。ビクトリア州の2つの独立委員会が名前や国籍、年齢を伏せた書類を医学的見地から審査したという。
同州のジャーラ・プルフォード・スポーツ相代行は「ジョコビッチ選手が免除を受けて全豪オープンへの出場が認められたのは彼がテニス界の大スターだからではない。国内の他のすべての人に適用されるルールに基づき資格があることを証明できたからだ。ビクトリア州の多くの人はこの結果を残念に思うだろうが、手続きは手続きだ」と説明していた。
開催地のメルボルンでは感染者が激増
全豪オープンが開催されるメルボルンでは昨年10月まで累計262日間にわたる世界最長のロックダウン(都市封鎖)を実施。ビクトリア州の12歳以上のワクチン接種率は9割を超える。しかしワクチンによる免疫を回避するオミクロン株の流行で1日当たりの新規感染者数は1千人台から一気に7万2千人超にまで激増し、死者も目立ち始めた。
一方、ジョコビッチ選手の弁護団は6日、強制送還の差し止めを求める訴えを裁判所に起こした。当のジョコビッチ選手は警察監視の下、メルボルンにある隔離ホテルに移送され、裁判所は10日以降に判断を示す見通しだ。収容者によるとホテルの環境は劣悪で、ジョコビッチ選手の家族は「セルビアへの攻撃だ」と怒りをあらわにしている。
詳細は今のところ不明だが、州政府はジョコビッチ選手がコロナ感染から完全に回復して免疫を獲得していると判断したのに対して、連邦政府は入国にはワクチン接種が不可欠との見解を大会主催者に事前に伝えていたにもかかわらず大会主催者が州政府への連絡を怠ったため、手違いが生じたとの報道もある。
オーストラリアでは総選挙を控え、モリソン首相率いるオーストラリア自由党は、野党・オーストラリア労働党にリードを許している。ジョコビッチ選手の接種免除を認めたビクトリア州政府はオーストラリア労働党が統治しており、モリソン首相が野党に対する攻撃材料をつくるためジョコビッチ選手をスケープゴートにしたとの見方もある。
国際オリンピック委員会(IOC)によると、北京冬季五輪では完全に予防接種を受けたすべてのアスリートと大会関係者も北京到着後、トレーニング、競技、業務のため大会の会場間を移動することだけが許される。未接種者は到着後、21日間隔離して感染の有無を確認する。正当に医学的な免除が認められるアスリートは例外として考慮される。
反ワクチン主義者の広告塔になったジョコビッチ選手
イギリスでは成人の20人に1人がワクチン接種を受けておらず、アメリカでも7人に1人が接種していないと答えている。サッカーのイングランドプレミアリーグでも少なくとも6人に1人のフットボーラーは予防接種を受けていない。ジョコビッチ選手は以前から接種義務化に反対していることから反ワクチン主義者の広告塔として祭り上げられてきた。