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ケルンの集団性的暴行で激震に見舞われるドイツ 揺れる難民受け入れ政策
ドイツでは禁錮3年の有罪が確定した場合に難民の地位が問われる。「この期間を1年に短縮してはどうか」「犯罪行為を行った場合、ドイツでの居住権を剥奪すべきだ」という声が政権の足元から噴き出す。「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国主義者」(PEGIDA、ペギーダ)やユーロ離脱を党是にする新興政党「ドイツのための選択肢(AfD)」はここぞとばかりに「メルケルが受け入れを表明するから、こんな事件が起きるのだ」と批判を強めている。
直近の世論調査では実に国民の20%がイスラム排斥を唱えるPEGIDAの主張に共感を覚えると回答しているのだ。東部ライプチヒでは外国人排斥のデモ行進が暴走し、ケバブ店の窓ガラスが割られたり、車やゴミ箱に放火されたりする騒動に発展、211人が逮捕された。難民受け入れに反対する抗議活動では、メルケルにイスラムのスカーフをかぶせたり、股間に黒い手を当てたりするポスターが掲げられている。
トルコでもドイツ人がテロの犠牲に
欧州連合(EU)でメルケルが主導した経済力や人口に応じた難民受け入れ枠の割当制に反発する旧東欧諸国の指導者も黙っていない。難民を締め出すため有刺鉄線のフェンスで国境を閉ざしたハンガリーの首相オルバンは「自由主義は危機に瀕している。我が国の対応は正しかった。欧州に向かう難民の流れを止めるべきだ」とトーンを上げる。スロバキアやポーランド、ルーマニアも同調している。
しかし英国のレイプ被害支援団体によると、イングランドやウェールズ地方で年間9万7千人もの男女がレイプされている。性的暴行の被害者は年間50万人だ。集団心理による犯罪、性的ハラスメント、窃盗や強奪は難民に限った話ではない。ただケルンでは過去3年間に計1万1千人が大晦日の夜と同じような被害を受けており、地元警察も行政当局も事件の重大性を見落とし、対応を誤った。
昨年11月のピーク時に1日に1万人を数えた難民の流入は現在、3千人に減っている。メルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)からは認定基準を満たさない難民を1日1千人国外追放する「ゼロ・トレランス」のアプローチを求める声が上がる。
1月12日には、トルコ最大都市のイスタンブールで過激派組織「イスラム国(IS)」の犯行とみられる自爆テロが起きた。10人が死亡したが、犠牲者はいずれもドイツ人観光客。ドイツの国内世論がさらに先鋭化するのは必至である。昨年、難民が大挙して欧州に押し寄せ、「難民危機」と大きな問題になった。しかしドイツの人道主義と欧州の結束が本物か、問われるのはこれからだ。