コラム

韓国で「週4日勤務制」は導入可能か

2021年09月22日(水)13時37分
ワークライフバランス(イメージ)

新たなワークライフバランスと雇用創出を求めて Nuthawut Somsuk-istock.

<韓国大統領選の争点になる可能性も高い「週4日勤務制」は実現するか>

最近、韓国では週4日勤務制に対する関心が高い。韓国で週4日勤務制に対する関心が高まっている理由は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、テレワーク等多様な働き方やワーク・ライフ・バランスの実現に対する関心が高まったからである。

2021年3月に求人・求職サイト「ジョブプラネット」が実施したアンケート調査によると、週4日勤務制の導入について回答者(週4日勤務制等短縮勤務を経験したことがない労働者)の97.2%が賛成すると答えた。但し、週4日勤務制の導入により労働時間が減少する代わりに給料が減額される場合には63.8%が、また年次有給休暇が減らされる場合は60.1%が導入に反対すると回答した。

週4日勤務制の導入に賛成する理由としては、「ワーク・ライフ・バランスが実現しやすい」が57.7%で最も高く、次いで、「生産性向上」(26.3%)、「休日増加による内需活性化」(8.9%)の順であった。一方、反対する理由としては「給料削減」(38.9%)、「導入が難しい業種もあるので公平性の問題がある」(33.3%)、「労働強度が高まる」(16.7%)等が挙げられた。

週4日勤務制の導入により休む時間が増えた場合、やりたいことは、「趣味生活」が67.1%で最も高く、次いで「何もやらずゆっくり休む」(16.4%)、「副業・兼業をする」(13.9%)の順であった。

一方、経営者と人事担当者に対する調査では87.6%が週4日勤務制の導入を「検討していない」と答えており、労働者の意見とは大きな差を見せた。週4日勤務制の導入を躊躇する理由は、「業務スケジュールを合わせることが難しい」(57.1%)、「生産性低下」(41.6%)、「業種の特性上導入が難しい」(39.9%)が上位3位を占めた。

調査結果をみると、週4日勤務制の導入に関する意見は労働者と経営者の間に大きな隔たりがあることが明らかになった。労働者側はより多様でワーク・ライフ・バランスが実現できる働き方を求めていることに対して、経営者側は週4日勤務制の実施による生産性低下や費用増加を懸念していることが分かる。

但し、週4日勤務制は韓国政府が2018年7月1日から施行した「週52時間勤務制」が定着する前には定着が難しいと考えられる。「週52時間勤務制」とは、残業時間を含めた1週間の労働時間の上限を従来の68時間から52時間に制限した制度であり、今年の7月1日からは従業員数5人以上~49人以下の小規模企業まで拡大適用された。「週52時間勤務制」を違反した事業主には、2年以下の懲役または2千万ウォン(約200万円)以下の罰金が科される。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story