「政治権力は銃口から生まれる」。毛沢東が語ったこのきわめて明快な権力観は、習近平の中国でも生きている。習近平は、2012年11月に中国共産党総書記に就いて以来、歴代の指導者と同様に、繰り返し人民解放軍に対して「党の軍に対する絶対的な指導」を守るよう繰り返し確認してきた。

 これを制度的に保障するために、やはり歴代の指導者と同様に、習近平は中国共産党のトップである中国共産党中央委員会総書記であり、国家のトップである国家主席であり、中国共産党の軍事に関わる意思決定のトップである中国共産党中央軍事委員会主席であり、国家の軍事に関わる意思決定のトップである国家中央軍事委員会主席を兼ねている。

 実は、中国共産党総書記はこれまで、その就任直後から、国家、そして軍の三権を一度に掌握してきたわけではない。現代中国政治において政治指導者たちは、権力を継承するとき、軍に関する権力の継承については、極めて慎重におこなってきた。

 天安門事件の責任を負って失脚した趙紫陽の後任として中国共産党総書記に就いた江沢民は、中国共産党中央軍事委員会主席の地位を、総書記就任から五カ月経ってから鄧小平から継いだ。江沢民の後継である胡錦濤は2002年11月に総書記に就任したが、中央軍事委員会主席となったのは2年後のことであった。

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 中国共産党は、江沢民から胡錦濤への権力継承を、中国共産党の歴史のなかで初めて平和裡に実現したと喧伝した。しかし党の権力の継承の時期と軍に関するその時期にズレがあるように、江から胡への権力の継承は不自然なものであった。そして習近平の中国になって、ようやく中国共産党と国家と軍の権力の継承がスムーズに実現したといっていいだろう。

習近平による統治の安定度を知る手掛かり

 胡錦濤から習近平への権力の継承は、党も国家も軍も、すべて同じタイミングで実現した。そうであるとはいえ、やはり党と軍の関係は、中国政治におけるホットイシューだ。習近平政権のゆくえ、中国共産党による統治の安定性を評価するときには、習近平の軍に対する掌握の程度が重要な指標の一つになる。

 しかしこの「掌握の程度」を可視化し、客観化する指標はない。できることは、習近平が軍を掌握するために、どの様な取り組みをおこなっているのかを説明するだけである。今回のコラムも、そうした試みの一つである。

 習近平政権下の大規模な軍事制度改革の青写真が明らかになったのは先月のことだ。11月24日から26日まで開催された中央軍事委員会改革工作会議において決定され、発表されたのである。今年の9月3日に北京で開催された抗日戦争勝利・世界反ファシズム戦争70周年記念大会で習近平国家主席が提起した30万人の人民解放軍の定員削減も含む軍事制度改革だ。