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トルコも中国も「独裁をやめろ」、NBA選手カンター・フリーダムの戦い
米国籍を取得したエネス・カンター・フリーダム DAN HAMILTONーUSA TODAY SPORTSーREUTERS
<トルコ出身ながらエルドアンを厳しく非難。米国籍を取得して「フリーダム」に改名したエネス・カンターの戦いは続く>
「私はアメリカ人になることを誇りに思う。世界で最も偉大な国。自由の国であり、勇者の故郷だ」
NBAのボストン・セルティックスに属するスター選手エネス・カンターは11月29日、このようにツイートし、米国籍を取得するための宣誓式に臨む動画を公開した。
彼はアメリカ市民となるに際し、自らの名前をエネス・カンター・フリーダム(自由)と改めた。自由は人間が持つことのできる最も偉大なものだ、「自由」を自分の一部として持ち歩き生涯をそのための戦いにささげたい、と語っている。
研究者だった父の留学先のスイスで生まれ、トルコで育ったトルコ人のエネスは2009年に10代で渡米。以来、トルコで独裁的権力を振るい、反対勢力を弾圧するエルドアン大統領を批判してきた。
16年にトルコでクーデター未遂が発生すると、エルドアンはその黒幕を在米のイスラム教指導者ギュレン師だと断定。ソイル内相は21年2月、クーデター失敗以降、ギュレン派との関連性を疑われた62万人以上が捜査対象となり、30万人以上が拘束され、2万5000人が今も投獄されていると発表した。トルコ当局は米当局に対しギュレンの引き渡しを何度も要求しているが、アメリカ側は拒否している。
インドネシアで強制連行寸前に
このギュレンを支持するエネスにも、エルドアンの魔の手は迫った。
19年1月のワシントン・ポスト紙への寄稿でエネスは、17年5月にインドネシアで拘束されそうになって慌てて国外脱出した体験や、トルコ当局が彼のパスポートを失効させた事実について語り、「エルドアンは私をトルコに連れ戻して消したいのだ」と訴えた。トルコ検察当局は今年10月までに計10回、彼の国際逮捕状を発行した。エネスの感じた危険は杞憂ではなかったのだ。
国際NGOフリーダム・ハウスは今年、対象国を説得して正当な手続きを経ずに、あるいはわずかに合法性を装って自国民を引き渡すよう説得する「レンディション(rendition)」による強制連行がトルコは世界で最も多いと報告。ギュレン派に対する抑圧を「世界的な粛清」だと非難した。
エネスはエルドアンを「今世紀のヒトラー」と呼んではばからない。彼がこれを「非常に強い表現」だと理解しつつ使うのは、トルコには自由も民主主義もなく、罪のない何万人もの人々が殺されたり拷問されたりしているからだという。
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