米関税の10%基本税率、シンガポール首相「交渉の余地ない」との見方

4月8日、シンガポールのウォン首相(写真)は米相互関税の一律10%の基本税率は交渉の余地がないようだと述べ、シンガポール経済は世界的な貿易摩擦の激化で打撃を受ける可能性があると指摘した。写真は昨年11月、バンコクで撮影(2025年 ロイター/Athit Perawongmetha)
[シンガポール 8日 ロイター] - シンガポールのウォン首相は8日、米相互関税の一律10%の基本税率は交渉の余地がないようだと述べ、シンガポール経済は世界的な貿易摩擦の激化で打撃を受ける可能性があると指摘した。
ウォン首相は議会での演説で、貿易に依存する同国の成長が大きな影響を受けることは間違いないと述べた。政府は国内総生産(GDP)成長率予測を下方修正する可能性が高いが、今年景気後退に陥るかは不明だとし。
現在の2025年成長率予測は1─3%。
「10%の一律税率は交渉の余地がなさそうだ。これは、各国の貿易収支や既存の貿易協定に関係なく設定された固定の最低関税率のようだ」と述べた。
シンガポールは米国と自由貿易協定を締結している。
ウォン氏は「両国間の深く長い友好関係を考えると、米国の動きに非常に失望している。友好国に対してとる行動ではない」と述べた。ただし報復関税は発動しない方針を示した。
「本格的な世界貿易戦争の可能性が高まっている」とし、目先、世界経済の成長が鈍化し、シンガポールの財サービスに対する需要が減少すると予想した。企業がシンガポールから米国に移転すれば、雇用喪失や人員削減が起こると警告した。
「政府は、この不安定な局面を切り抜け、誰一人取り残されることのないよう全力を尽くす」と述べた。
米通商代表部(USTR)のウェブサイトによると、米国は昨年、シンガポールに対し28億ドルの貿易黒字を計上した。シンガポールのガン・キムヨン貿易産業相は先週、米国の昨年の対シンガポール貿易黒字は300億ドルに達すると述べていた。