スイス中銀、マイナス金利復活の重圧に直面 トランプ関税巡る通貨高で

4月7日、トランプ米大統領が打ち出した関税政策による市場の大混乱を受け、安全通貨とされるスイスフランが高騰しているため、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は政策金利を再びマイナス圏まで引き下げることを迫られる事態に直面している。1月29日、ベルンで撮影(2025年 ロイター/Denis Balibouse)
[チューリヒ 7日 ロイター] - トランプ米大統領が打ち出した関税政策による市場の大混乱を受け、安全通貨とされるスイスフランが高騰しているため、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は政策金利を再びマイナス圏まで引き下げることを迫られる事態に直面している。既に物価上昇率がゼロ近辺にとどまっている上に、通貨高は物価を一段と押し下げかねないからだ。
トランプ氏が2日に相互関税の詳細を発表して以来、市場関係者の間でSNBが追加利下げに動くとの予想が増え続けている。
SNBは、マイナス金利はできるなら避けたいが、物価安定の維持に必要ならば実行する用意はあると繰り返し表明してきた。
先週SNBのチュディン理事は「マイナス金利をわれわれは喜ばしく思わない。しかし物価安定に必要な場合、それは実際に役立つ手段だ」と認めた。
現在の政策金利は0.25%で、物価上昇率は0.3%と、SNBが掲げる目標圏(0─2%)の下限に近い。
スイスフランは7日、対ドルで6カ月ぶり、対ユーロでは2024年末以来、対ポンドでは24年8月以来の高値を付けた。
さらにトランプ氏が明らかにした相互関税上乗せ分のスイスへの適用税率は欧州連合(EU)や英国より高く、エコノミストのスイス経済成長見通し引き下げにつながっている。
経済の勢いが弱まれば、通貨高とともに物価を押し下げる公算が大きい。
こうした中でLSEGのデータによると、市場がSNBは追加で25ベーシスポイント(bp)の利下げに動くことを織り込みつつある。
EFGのエコノミスト、ジャンルイジ・マンドルツァット氏は、既にほぼゼロの物価上昇率について、原油安の影響を挙げて一時的にマイナスとなるリスクは高まり続けていると分析。「デフレリスクは高まっており、だからこそ政策金利が再びマイナスとなる可能性も相当増大してきた」と述べた。
SNBは2014年から22年までマイナス金利政策を続けていた。
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、エイドリアン・プレテジョン氏は、SNBが次回6月会合で政策金利をゼロにするとともに、さらに引き下げることもためらわないだろうとみている。
同氏は、SNBの政策運営リスクは、臨時会合での前倒し利下げ、あるいは想定より大幅な利下げとマイナス金利復活の方向に傾いているとの見方を示した。