ニュース速報
ワールド

スイス中銀、マイナス金利復活の重圧に直面 トランプ関税巡る通貨高で

2025年04月08日(火)09時39分

4月7日、トランプ米大統領が打ち出した関税政策による市場の大混乱を受け、安全通貨とされるスイスフランが高騰しているため、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は政策金利を再びマイナス圏まで引き下げることを迫られる事態に直面している。1月29日、ベルンで撮影(2025年 ロイター/Denis Balibouse)

[チューリヒ 7日 ロイター] - トランプ米大統領が打ち出した関税政策による市場の大混乱を受け、安全通貨とされるスイスフランが高騰しているため、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は政策金利を再びマイナス圏まで引き下げることを迫られる事態に直面している。既に物価上昇率がゼロ近辺にとどまっている上に、通貨高は物価を一段と押し下げかねないからだ。

トランプ氏が2日に相互関税の詳細を発表して以来、市場関係者の間でSNBが追加利下げに動くとの予想が増え続けている。

SNBは、マイナス金利はできるなら避けたいが、物価安定の維持に必要ならば実行する用意はあると繰り返し表明してきた。

先週SNBのチュディン理事は「マイナス金利をわれわれは喜ばしく思わない。しかし物価安定に必要な場合、それは実際に役立つ手段だ」と認めた。

現在の政策金利は0.25%で、物価上昇率は0.3%と、SNBが掲げる目標圏(0─2%)の下限に近い。

スイスフランは7日、対ドルで6カ月ぶり、対ユーロでは2024年末以来、対ポンドでは24年8月以来の高値を付けた。

さらにトランプ氏が明らかにした相互関税上乗せ分のスイスへの適用税率は欧州連合(EU)や英国より高く、エコノミストのスイス経済成長見通し引き下げにつながっている。

経済の勢いが弱まれば、通貨高とともに物価を押し下げる公算が大きい。

こうした中でLSEGのデータによると、市場がSNBは追加で25ベーシスポイント(bp)の利下げに動くことを織り込みつつある。

EFGのエコノミスト、ジャンルイジ・マンドルツァット氏は、既にほぼゼロの物価上昇率について、原油安の影響を挙げて一時的にマイナスとなるリスクは高まり続けていると分析。「デフレリスクは高まっており、だからこそ政策金利が再びマイナスとなる可能性も相当増大してきた」と述べた。

SNBは2014年から22年までマイナス金利政策を続けていた。

キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、エイドリアン・プレテジョン氏は、SNBが次回6月会合で政策金利をゼロにするとともに、さらに引き下げることもためらわないだろうとみている。

同氏は、SNBの政策運営リスクは、臨時会合での前倒し利下げ、あるいは想定より大幅な利下げとマイナス金利復活の方向に傾いているとの見方を示した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、金利維持し一段の情報待つ必要 不確実性踏ま

ワールド

米国務長官と中東担当特使が訪欧、17日に米仏外相会

ビジネス

米3月小売売上高1.4%増、約2年ぶり大幅増 関税

ワールド

19日の米・イラン核協議、開催地がローマに変更 イ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 9
    あまりの近さにネット唖然...ハイイログマを「超至近…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 10
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中