焦点:ルビオ氏の米国務長官指名、対中戦略のタカ派転換を示唆
11月14日、 トランプ次期米大統領(写真左)は中国に対する強硬姿勢で知られるマルコ・ルビオ上院議員(同右)を国務長官に指名した。ノースカロライナ州ローリーで4日撮影(2024年 ロイター/Jonathan Drake)
Michael Martina
[ワシントン 14日 ロイター] - トランプ次期米大統領は中国に対する強硬姿勢で知られるマルコ・ルビオ上院議員を国務長官に指名した。これはトランプ政権の対中政策が関税と貿易の重視にとどまらず、よりタカ派的な姿勢に転じる可能性を示唆している。
トランプ氏は国家安全保障担当の大統領補佐官にマイク・ウォルツ下院議員、中央情報局(CIA)長官には第1次トランプ政権で国家情報長官を務めたジョン・ラトクリフ氏を充てた。中国を不快にしそうな人事だ。
こうした人選からは、台湾支援からフェンタニル危機に至るまで、バイデン政権による中国との「競争を管理する」アプローチを転換したいというトランプ氏の考えが透ける。
中国問題に詳しい元外交官のデービッド・ファイアスタイン氏はルビオ氏について、「中国は米国の敵だと心の底から信じている」と語る。「それが中国に対する彼の行動の全てに影響を与えるだろう」と述べ、中国とのゼロサム競争に関するルビオ氏の信念は米中の緊張や対立を増幅させるとの見方を示した。
ルビオ氏は香港の民主化運動を支援したとして、2020年に中国から制裁を受けた。同氏が国務長官に就任すれば、中国は初めて米国務長官に渡航制限を課すことになる。この問題への対応は、中国がトランプ政権とどのように関わっていくかを示す試金石となる。
在米中国大使館は、ルビオ氏に対する制裁や同氏の国務長官指名についてコメントしなかったが、報道官は新政権と協力して「安定的かつ健全で持続可能な方向」での関係推進を中国政府は心待ちにしていると述べた。
<人権を重視>
ルビオ氏は中国の人権問題を重視してきた。新疆ウイグル自治区からの輸入には強制労働で生産されたものではないことの証明を義務付ける「ウイグル強制労働防止法」を共同提案し、中国の猛反発を招いた。
また香港の民主化運動を後押しすることを目的とした「香港人権・民主化法案」を提出し、19年に成立した。香港の活動家はルビオ氏を民主化運動の擁護者とみなしている。
現在審議されている米国の香港経済貿易代表部に対する認証取り消し権限を国務長官に与える法案も同氏が提案した。
ルビオ氏はまた、国家安全保障に対する中国の脅威に焦点を当て、電気自動車(EV)用電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)の禁輸リスト追加や、米国の技術の対中輸出規制強化などを主導してきた。
北京にとって最も不快なのは、台湾に対するルビオ氏の全面的な支持だろう。同氏は台湾との自由貿易協定(FTA)や米台当局者の自由な交流を呼びかけている。
トランプ氏はこれまでに習近平国家主席をたびたび称賛しており、対中規制でルビオ氏にどの程度自由度を与えるかは不明だ。そうした措置が政権の他の目標と相反する場合はさらに不透明だ。
アジア・ソサエティー政策研究所のダニエル・ラッセル氏は、「(トランプ氏による外交政策の)布陣は対中タカ派が目立つ。しかしトランプ氏が中国との対決から取引へ方向転換すれば、それに従うだろう」と述べた。
中国はルビオ氏を避けて、首脳同士や他の米高官との直接対話を模索する可能性がある。
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)のディレクター、スティーブ・ツァン氏は「もしそれがうまくいかなければ、両国の関係はますます悪化していくだろう」と語った。