ニュース速報
ワールド

アングル:ハリス氏、インフレが依然弱み ピーク時から沈静化でも

2024年11月05日(火)20時21分

 11月4日、米国のインフレ率は一時に比べて大幅に下がっているが、高インフレは依然として米大統領戦の重要な争点であり、民主党候補のハリス副大統領の弱みとなっている。米首都ワシントンで8月14日撮影(2024年 ロイター/Kaylee Greenlee Beal)

Howard Schneider

[ワシントン 4日 ロイター] - 米国のインフレ率は一時に比べて大幅に下がっているが、高インフレは依然として米大統領戦の重要な争点であり、民主党候補のハリス副大統領の弱みとなっている。

インフレ率は2年以上前に9%でピークを迎え、現在は2.4%に落ち着いている。しかも賃金は上昇、経済は成長を続け、失業率は低水準にとどまっている。それでもハリス氏はインフレに対する国民の不満をぬぐい去れず、共和党候補のトランプ前大統領はハリス氏への攻撃材料を手にしている。

新型コロナウイルスのパンデミックが一段落して経済が再開し、政府からの給付金が家計に流れた2021年にバイデン政権の支持率は一時50%を超えていたが、その後はインフレの影響で40%前後に低迷している。

調査会社ギャラップの広報担当者、ジャスティン・マッカーシー氏は「インフレは争点として消えていない」と言う。同社の月次調査では、インフレを最も深刻な問題に挙げる人の割合が、インフレがピークだった22年の約20%から、現在では15%前後に下がっている。それでも、この比率は過去平均の約2倍であり、経済全般に関する懸念の中にインフレを挙げた人の割合は40%を超えている。

ハリス氏は住宅コストや生鮮食品の高騰に対処すると約束しているが、物価問題に関する支持率はトランプ氏がハリス氏を上回り続けている。

7つの激戦州で最近実施されたロイター/イプソス調査では、回答者の68%が生計費は「間違った軌道」にあると答え、61%は経済についても同様の回答をした。半数は、経済政策についてトランプ氏の方が「良い計画、政策、もしくはアプローチ」を持っていると答え、ハリス氏の37%を上回った。インフレへの対応についてはトランプ氏の支持率が47%、ハリス氏が34%だった。

バイデン政権、そしてハリス氏陣営は早くからインフレが問題になることを認識していた。

バイデン大統領は、看板法案のひとつを「インフレ抑制法」と名付けたが、その焦点は電気自動車(EV)とクリーンエネルギーへの補助に絞られていた。

家賃と住宅価格の高騰が喫緊の課題になると、バイデン政権は家賃引き上げに上限を設けたり、低価格住宅の建設に税優遇を与えたりといった措置を提案した。

昨年からインフレが和らぎ始めると、消費者態度指数はやや改善したが、そこで頭打ちとなった。

インフレに関する調査では、価格ショックは根深く、すぐに忘れ去られるものではないことが一貫して示されている。

ボッコーニ大学とハーバード大学の研究者らは3月から5月にかけて2264人を対象にオンライン調査を実施し、「インフレは家計の意思決定を非常に複雑化させている」と結論付けた。

また、民主党は物価よりも賃金の方が急ピッチで伸びていると強調するが、市民はその点をあまり気に留めないようだ。この調査では「インフレはどこから見ても良くない現象であり、明るい経済現象を伴う可能性はない、と認識されている」ことが分かった。人々は、インフレが「大きなトレードオフ無しで」恒久化すると予想しているという。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルの空爆でパレスチナ人30人死亡、ガザ北部

ワールド

アングル:ハリス氏、インフレが依然弱み ピーク時か

ワールド

米大統領選、投票始まる 激戦州の勝敗なお見通せず

ビジネス

テスラ、独ギガファクトリーで4%賃上げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大人気」の動物、フィンランドで撮影に成功
  • 2
    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王子の映像が話題に...「不幸なプリンセス」メーガン妃との最後の公務
  • 3
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄道計画が迷走中
  • 4
    「生野菜よりも、冷凍野菜のほうが健康的」...ブロッ…
  • 5
    ネアンデルタール人「絶滅」の理由「2集団が互いに無…
  • 6
    在日中国人「WeChatで生活、仕事、脱税」の実態...日…
  • 7
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 8
    「これぞプロ」 テイラー・スウィフト、歌唱中のハプ…
  • 9
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 10
    NASA観測が捉えた「アトラス彗星の最期...」肉眼観測…
  • 1
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 2
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大人気」の動物、フィンランドで撮影に成功
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
  • 5
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 6
    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…
  • 7
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 8
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 9
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 10
    「第3次大戦は既に始まっている...我々の予測は口に…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 7
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中