アングル:ハリス氏、インフレが依然弱み ピーク時から沈静化でも
11月4日、米国のインフレ率は一時に比べて大幅に下がっているが、高インフレは依然として米大統領戦の重要な争点であり、民主党候補のハリス副大統領の弱みとなっている。米首都ワシントンで8月14日撮影(2024年 ロイター/Kaylee Greenlee Beal)
Howard Schneider
[ワシントン 4日 ロイター] - 米国のインフレ率は一時に比べて大幅に下がっているが、高インフレは依然として米大統領戦の重要な争点であり、民主党候補のハリス副大統領の弱みとなっている。
インフレ率は2年以上前に9%でピークを迎え、現在は2.4%に落ち着いている。しかも賃金は上昇、経済は成長を続け、失業率は低水準にとどまっている。それでもハリス氏はインフレに対する国民の不満をぬぐい去れず、共和党候補のトランプ前大統領はハリス氏への攻撃材料を手にしている。
新型コロナウイルスのパンデミックが一段落して経済が再開し、政府からの給付金が家計に流れた2021年にバイデン政権の支持率は一時50%を超えていたが、その後はインフレの影響で40%前後に低迷している。
調査会社ギャラップの広報担当者、ジャスティン・マッカーシー氏は「インフレは争点として消えていない」と言う。同社の月次調査では、インフレを最も深刻な問題に挙げる人の割合が、インフレがピークだった22年の約20%から、現在では15%前後に下がっている。それでも、この比率は過去平均の約2倍であり、経済全般に関する懸念の中にインフレを挙げた人の割合は40%を超えている。
ハリス氏は住宅コストや生鮮食品の高騰に対処すると約束しているが、物価問題に関する支持率はトランプ氏がハリス氏を上回り続けている。
7つの激戦州で最近実施されたロイター/イプソス調査では、回答者の68%が生計費は「間違った軌道」にあると答え、61%は経済についても同様の回答をした。半数は、経済政策についてトランプ氏の方が「良い計画、政策、もしくはアプローチ」を持っていると答え、ハリス氏の37%を上回った。インフレへの対応についてはトランプ氏の支持率が47%、ハリス氏が34%だった。
バイデン政権、そしてハリス氏陣営は早くからインフレが問題になることを認識していた。
バイデン大統領は、看板法案のひとつを「インフレ抑制法」と名付けたが、その焦点は電気自動車(EV)とクリーンエネルギーへの補助に絞られていた。
家賃と住宅価格の高騰が喫緊の課題になると、バイデン政権は家賃引き上げに上限を設けたり、低価格住宅の建設に税優遇を与えたりといった措置を提案した。
昨年からインフレが和らぎ始めると、消費者態度指数はやや改善したが、そこで頭打ちとなった。
インフレに関する調査では、価格ショックは根深く、すぐに忘れ去られるものではないことが一貫して示されている。
ボッコーニ大学とハーバード大学の研究者らは3月から5月にかけて2264人を対象にオンライン調査を実施し、「インフレは家計の意思決定を非常に複雑化させている」と結論付けた。
また、民主党は物価よりも賃金の方が急ピッチで伸びていると強調するが、市民はその点をあまり気に留めないようだ。この調査では「インフレはどこから見ても良くない現象であり、明るい経済現象を伴う可能性はない、と認識されている」ことが分かった。人々は、インフレが「大きなトレードオフ無しで」恒久化すると予想しているという。