アングル:共和党、トランプ氏敗北に備え選挙結果転覆の地ならし 激戦州で提訴
11月5日の米大統領選の勝敗を左右しそうな激戦7州に含まれる西部アリゾナ州で、共和党候補トランプ前大統領の顧問スティーブン・ミラー氏が創設した保守系団体が選挙結果の転覆を視野に入れた訴訟を起こしている。写真は9月12日、アリゾナ州トゥーソンで開かれたトランプ氏の選挙集会で撮影(2024年 ロイター/Mike Blake)
Jack Queen
[29日 ロイター] - 11月5日の米大統領選の勝敗を左右しそうな激戦7州に含まれる西部アリゾナ州で、共和党候補トランプ前大統領の顧問スティーブン・ミラー氏が創設した保守系団体が選挙結果の転覆を視野に入れた訴訟を起こしている。団体が唱えているのは、地元当局に「不手際や不正行為」があった場合、法廷が選挙結果を覆せるという大胆な法的理論だ。
アリゾナ州の2つの郡では、民主党候補のハリス副大統領が世論調査でトランプ氏を僅差でリードしている。保守系団体「アメリカ・ファースト・リーガル・ファウンデーション」は2月に起こしたこの訴訟で、法廷が2つの郡で投票のやり直しを命じることができるはずだと主張した。
トランプ氏は2020年の大統領選に敗れ、同氏と仲間は選挙結果を覆すために60件を超える訴訟を起こしたものの失敗。共和党は今回早めに訴訟を起こすことで、敗れた場合に結果を覆すための地ならしを目論んでいる。
共和党全国委員会は、26州で計120件を超える訴訟に関わっていることを明らかにした。一部の法律専門家や投票権擁護団体によると、これは選挙制度への信頼を失わせるための戦略だ。
共和党は、訴訟は不正投票を防いで選挙への信頼を取り戻すのが目的だと主張している。
アリゾナ州の訴訟が成功する見込みは小さいが、法律の専門家は、共和党側は選挙結果に異を唱えるのを目的にこうした訴訟を起こしているとみている。
コロンビア大法科大学院のリチャード・ブリフォールト教授は「(選挙で)不正が行われたので外部の介入が必要だ、という物語を作り上げる」戦略の一環だと解説した。
重要州で1判事が選挙結果に無効の判断を下すようなことがあれば、混乱と選挙結果確定の遅れにつながりかねず、それこそが共和党の狙いだとの見方もある。
ハリス氏陣営は声明で、共和党は「わが国の選挙に不信の種をまき、わが国の民主主義を傷付けることで、破れた場合に不正を主張できるよう策略を講じている」との見方を示した。
共和党はミシガン、ネバダ、ペンシルベニアなどの激戦州でも、有権者登録の拡大阻止や郵便投票規則の厳格化を求める訴訟を起こしている。
トランプ氏は20年の大統領選が不正だったという虚偽の主張を繰り返しており、共和党員の間にはこの考え方が根付いている。今年8月のロイター/イプソスの世論調査によると、有権者登録をしている共和党員の71%は選挙不正がまん延していると答えており、無党派層の37%、民主党員の16%を大きく上回った。