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アングル:自民総裁選前にテーマ探し活発化、防衛関連有望視 割高感指摘も

2024年09月24日(火)18時53分

 27日の自民党総裁選を控え、株式市場では有力候補が訴える政策から次の相場のテーマを読み解こうとする動きが活発化している。写真は14日、東京都内で代表撮影(2024年 ロイター)

Noriyuki Hirata

[東京 24日 ロイター] - 27日の自民党総裁選を控え、株式市場では有力候補が訴える政策から次の相場のテーマを読み解こうとする動きが活発化している。防衛関連を筆頭に、農林水産や国土強靭化、子育て・教育支援などがすでに物色の対象にされている。一方、先取りして買われているだけに割高感を払しょくできるかが鍵になる。

主要国内メディアの集計では、石破茂元幹事長、高市早苗経済安全保障相、小泉進次郎元環境相の3人の接戦になるとの見方が優勢だ。各候補の主張に基づくと、物色につながりそうな共通・類似のテーマが見えてくる。

松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「防衛関連が一番無難だろう」と話す。三菱重工業や川崎重工業、IHIなどは、岸田文雄政権の防衛力強化の動きの中ですでに人気化している。株価収益率(PER)の面から割高感も意識されるが「改めて予算が出れば、まだ上値余地はある」(松井の窪田氏)という。

地政学リスクが意識された24日の東京市場で、防衛関連株は大幅高となった。領空侵犯したロシア軍機に航空自衛隊機がフレアを発射し警告したことや、イスラエル軍によるレバノンの親イラン武装組織ヒズボラへの大規模な攻撃などが伝わり、刺激材料になった。11月の米大統領選に向けても、地政学リスクは意識されやすいとみられている。

このほか、農林水産業支援も共通・類似のテーマ。種苗や農業施設工事を扱うサカタのタネや農業機械のクボタのほか、人手不足下でトプコンなど農業DX分野も有望視され得る。水産業では高市氏が陸上養殖支援に言及。水産加工のマルハニチロは三菱商事と陸上養殖を計画しているほか、ゼネラル・オイスターはカキの陸上養殖を手掛ける。

国土強靭化や子育て・教育支援も引き続きテーマになり得る。国土強靭化では清水建設や大成建設、鹿島などのゼネコン大手のほか、ショーボンドホールディングスや建設技術研究所などの老朽化対策と目される銘柄群も有力視されそうだ。

子育て支援では、保育所運営のグローバルキッズCOMPANY、JPホールディングス、ベビーシッター派遣のポピンズなどが、前回の総裁選時から選挙後にかけて物色された経緯がある。

小泉氏や石破氏が掲げるリスキリング・再就職支援ではリクルートホールディングスなど、石破氏のシェルター整備では技研ホールディングスなど、高市氏が主張する偽情報の検知・分析では富士通などに、それぞれ関連株とされる銘柄に思惑が波及するかもしれない。

<本格織り込みは選挙後か>

もっとも、三つ巴の戦いが伝えられる中、どの候補が当選するか、選挙の行方は予断を許さない。金融政策の正常化や財政健全化を志向すると市場でみられている石破氏と、金融緩和の継続、財政拡張路線を訴える高市氏とでは、政策の方向性が真逆だ。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は「(政策の方向性が)両極端のため、総裁選前にはポジションを取りにくい」と話しており、政策に基づく物色が強まるのは「選挙後」との見方を示している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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