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焦点:解散視野に政策競う、早期経済対策へ布石も 自民総裁選あす告示

2024年09月11日(水)16時16分

 9月11日、岸田文雄首相(自民党総裁)の後任を選出する党総裁選が12日、告示される。写真は都内の自民党本部で2009年7月撮影(2024 ロイター/Stringer)

Takaya Yamaguchi Yoshifumi Takemoto

[東京 11日 ロイター] - 岸田文雄首相(自民党総裁)の後任を選出する党総裁選が12日、告示される。名乗りを挙げた候補者のうち、小泉進次郎元環境相が早期の衆院解散に言及し、石破茂元幹事長もその必要性を訴えた。新首相が解散を打てば、掲げた政策が党公約に反映され、先立つ論戦は経済対策策定に向けた布石となる。

<飛び交う日程、10月説も>

「総理総裁になったら、できるだけ早期に衆議院を解散し、私の改革プランについて国民の信を問う」――。

自民党総裁選に出馬を表明した小泉元環境相は6日の記者会見で早期解散を明言し、「国民の共感を取り戻したうえで改革を断行し、新しい政治、新しい日本をつくりたい」と強調した。

小泉氏に先立ち出馬を表明した石破元幹事長も「全閣僚出席の予算委員会を一通りやって、この政権が何を考えているか、何を目指そうとしているかを国民に示せた段階で、可能な限り早く信を問うべきだ」としている。自身が選出された場合は、速やかに総選挙に打って出る構えだ。

現時点で候補者9人すべてが早期解散に言及しているわけではないが、政府・与党内では、早くも選挙日程が飛び交う。複数の関係者によると、27日の党総裁選後に召集する臨時国会は早ければ10月1日と想定。「所信表明や代表質問を挟んで9日に解散する日程が、新たに取り沙汰されている」(与党関係者)という。

「新しい総理が誕生したら、国民に問うのが憲政の常道」(自民幹部)との声も根強く、10月15日公示、27日投開票とする日程や、代表質問後に予算委員会を開き、29日公示、11月10日投開票とする案が出ている。

<「戦略的な財政出動」訴え>

岸田政権が、2021年10月31日投開票の衆院選を挟んで策定した経済対策(過去最大となる財政支出55.7兆円)では、10月8日の策定指示から2カ月余りで、裏付けとなる補正予算の成立までこぎ着けた。

小泉氏は、年金生活世帯や低所得者世帯への支援、物価高騰へのきめ細かい支援のための地方交付金の拡充などを念頭に、「直ちに経済対策の検討を指示する」と述べた。「政治とカネ」の問題を払拭し、国民から共感を得られる対策をまとめられるかが求められる。

石破氏も10日に発表した政策集で、「早急に経済対策を策定し、成長戦略を取りまとめ、その実現に向けて政府・与党一丸となって取り組む」と明記した。生活必需品の価格上昇や、住宅ローンなど金利上昇への緊急対策にも触れた。

9日に出馬を正式表明した高市早苗経済安保担当相は、大胆な危機管理投資と成長投資を通じ、「何よりも経済成長が必要」と言及。雇用と所得を増やし、消費マインドを改善させるための「戦略的な財政出動」を訴えた。

加藤勝信元官房長官は10日の会見で「国民の所得倍増を最優先で推し進めたい」とし、大胆な補正予算を編成して早期成立をめざすと語った。

総裁選に先立ち、現政権が電気・ガス料金とガソリン価格など物価高騰対策として予備費からほぼ満額(1兆円のうち9891億円)を拠出したことから、災害対応を除き、緊急に使える資金は残っていない。

選挙に伴う政治空白を招くことなく、速やかに対策を練り上げられるかも焦点となる。

<ガソリン補助金では出口論>

22年1月の導入以降続くガソリン補助金をどう扱うかも、新政権の財政運営を占う試金石となる。いったん終了して復活させた電気・ガス料金への補助を含め、林芳正官房長官は10日の政策会見で「電気・ガソリン価格が安定するまで引き続き抑制策を行わなければならない」と述べた。

電気・ガス料金、ガソリン価格の高騰を受けた補助金支給では、なお延長論がくすぶる。一方、年初からの急ピッチな為替円安が落ち着き、原油価格も下落傾向にある中、政府内では出口に向けた動きがある。

補助金に関する予算総額は累計で11兆円に膨らみ、野放図な延長を繰り返せば基礎的財政収支(プライマリーバランス)の25年度黒字化が危うくなる。経済成長と併せ、健全財政にどう折り合いをつけるかは課題が残る。

ロイター
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