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アングル:利下げ拒む豪中銀、住宅ローンにあえぐ国民の圧力に耐えられるか

2024年08月24日(土)07時53分

オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は数週間以内に強い金融緩和圧力にさらされるだろう。写真はシドニーの同行前で2016年10月撮影(2024年 ロイター/David Gray)

Wayne Cole

[シドニー 21日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は数週間以内に強い金融緩和圧力にさらされるだろう。コアインフレに強固な粘着性が見られるものの、政府の生活費軽減策で消費者物価が大幅に押し下げられるためだ。

来週発表される7月指標では総合インフレ率が2021年以来初めてRBA目標の2─3%に回帰する可能性が高い。住宅ローン返済負担にあえぐ国民や政治家から利下げを求める声が強まることになる。

9月24日の次回理事会までに米国、欧州、カナダで金融緩和が予想される中、RBAは先進国の中銀でほぼ唯一、利下げを見送ることになりかねない。

動揺を抑えようと、政策当局者はこれまで、インフレの上振れリスクを踏まえると利下げの可能性は当面低いと繰り返し明言してきた。

こうした条件付きのフォワードガイダンスはRBA内ではタブー視されていた。21年にロウ総裁(当時)が24年まで金利上昇の可能性は低いと発言し、その後総裁に再任されなかった経緯があるためだ。

オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)の豪州経済担当責任者ガレス・エアード氏は「短期間にこれほど多くの発信がRBAからあったことは記憶にない」と語る。

短期的に経済指標がRBAの最新予測通り推移すれば政策金利は25年第1・四半期まで据え置かれることになるとしつつ、「われわれは引き続き市場予想を支持し、年内に利下げが実施される可能性の方が高いと考えている」と述べた。

RBAの方針とは裏腹に、市場は9月に0.25%の利下げがある確率を42%とみており、11月では84%まで上昇する。

<CPIに注目>

消費者物価指数(CPI)の軟化は確実だ。ゴールドマン・サックスのエコノミストであるアンドリュー・ボーク氏は、7月だけでCPIが0.7%急落し、前年比のインフレ率は2.7%と1%ポイントも落ち込むと予想している。

CPIが28日に発表されれば、ほとんどの住宅ローンが変動金利の豪州で借り手の負担軽減を求める見出しがメディアに躍ることは間違いない。

RBAのブロック総裁は、第2・四半期に3.9%だったコアインフレ率こそが問題であり、RBAが「長期的な視野に立って」政策を運営していることを国民は理解するだろうと主張している。

しかし、22年半ば以降の金融引き締めは住宅ローンの月間平均返済額を1000豪ドル以上増やし、家計を圧迫している。調査によれば、消費者心理は通常なら景気後退時にしか見られないような低水準にある。

有権者の圧力を受けた議員は今月、議会でブロック総裁に厳しい質問を浴びせた。

世界的な潮流も金融緩和に後ろ向きなRBAに逆行。隣国のニュージーランドも政策金利を先週引き下げた。

9月のRBA理事会は緊迫しそうだ。

ロイター
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