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焦点:中国、アフリカで経済活動再び活発化 一方的関係との指摘も

2024年05月29日(水)18時31分

 5月28日、新型コロナウイルス流行で停滞していた中国の対外経済協力プログラムが、アフリカ中心に回復しつつある。ヨハネスブルクで2023年8月、代表撮影(2024年 ロイター)

Rachel Savage Duncan Miriri

[ヨハネスブルク/ナイロビ 28日 ロイター] - 新型コロナウイルス流行で停滞していた中国の対外経済協力プログラムが、アフリカ中心に回復しつつある。ロイターが分析した融資、投資、貿易データで明らかになった。

中国はアフリカの近代化を支援し「ウィンウィン」の協力を促進する方針を掲げている。しかし大部分がなお搾取的な関係にあり、中国が唱える広域経済圏構想「一帯一路」の理念に沿っていないことをデータが示している。

豪グリフィス大学のグリフィス・アジア研究所によると、中国のアフリカ向け新規投資は昨年114%増加したが、エネルギー転換と経済の立て直しに不可欠な鉱物に大きく注力していた。

貿易に関しても鉱物と石油が大部分を占めた。アフリカ産の農産物や工業製品の輸入を増やす取り組みが行き詰まるにつれ、アフリカの対中貿易赤字は膨れ上がっている。

かつてはアフリカのインフラ整備の主な資金源だった中国の政府融資は過去20年で最低水準にある。また中国が新たな投資手段として力を入れている官民パートナーシップ(PPP)は、アフリカではまだ広がっていない。

その結果、アフリカからの原材料輸入が中心となる一方的な関係が生まれ、植民地時代の欧州とアフリカの経済関係のような状態になっているとアナリストは指摘する。

中国はこうした見方を否定している。中国外務省はロイターの質問に対し「アフリカには対外関係を発展させ、パートナーを選択する権利と能力と知恵がある」と回答。「アフリカの特色に応じた近代化に対する中国の実践的支援を歓迎する国が増えている」と述べた。  

一帯一路構想の焦点であるアフリカへの関与は、新型コロナ前の20年間で急速に拡大した。中国企業はアフリカ大陸全土で港湾、水力発電所、鉄道を建設し、資金の大半は政府融資によって賄われた。ボストン大学のグローバル・チャイナ・イニシアチブによると、年間の融資契約は2016年に284億ドルでピークに達した。

しかし、多くのプロジェクトは採算が取れないことが判明。一部の国は債務返済が困難になり、中国が融資を削減。その後は新型コロナ流行を経てアフリカでの建設プロジェクトは減少した。

政府融資の回復は見込まれていない。中国当局は国内企業が資本参加し、外国政府のために建設するインフラを運営するよう働きかけている。中国アナリストらは企業がより高額の契約を獲得し、リスクを負うことでプロジェクトを採算の取れるものにすることが狙いと解説する。

グリフィス・アジア研究所によると、中国のアフリカにおける建設契約と投資契約の合計は昨年217億ドルとなり、トップに躍り出たとみられる。

米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)のデータによると、23年の中国の対アフリカ投資は約110億ドルと、05年の調査開始以来最高となった。ボツワナの銅鉱山やナミビア、ザンビア、ジンバブエのコバルト、リチウム鉱山など、約78億ドルを鉱業が占めた。

こうした中、アフリカ諸国が優先的に進める一部のプロジェクトは資金調達に苦戦している。ケニアでは中国の建設会社に政府が支払う資金が尽きたため、複数の道路工事が行き詰まった。ケニアの主要港からウガンダ国境までを横断する鉄道の建設も19年に中国の資金援助が枯渇して以来、宙に浮いた状態となっている。

中国税関のデータによると、中国とアフリカの貿易額は昨年、過去最高の2820億ドルに達した。しかし原油価格下落などによりアフリカの対中輸出は7%減少し、貿易赤字は46%拡大した。

ケニアの対中輸出はチタンの輸出が減ったため15%以上減少した。その一方で中国製品の流入は続いている。

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の事務局顧問フランシス・マンジェニ氏は、この状況は持続可能ではないと指摘。アフリカ諸国が加工や製造の拡大を通じて輸出品に付加価値を付けることができなければ、「われわれは中国経済を活性化させるために鉱物資源を輸出しているだけだ」と語った。

ロイター
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