米個人消費が鈍化、物価高や経済見通し悪化で

消費者金融会社シンクロニー・ファイナンシャルによると、米国の消費者が物価高や経済見通しの悪化を受けて消費を抑制しつつある。ニュージャージー州シコーカスで2023年6月撮影(2025年 ロイター/Siddharth Cavale)
Nupur Anand
[ニューヨーク 25日 ロイター] - 消費者金融会社シンクロニー・ファイナンシャルによると、米国の消費者が物価高や経済見通しの悪化を受けて消費を抑制しつつある。
ニューヨーク連銀の先月の発表によると、米国の家計債務残高は増加しており、自動車ローン、クレジットカード、住宅担保融資では延滞がやや増えている。
フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁も、消費にストレスの兆候が見られ、インフレ見通しにリスクが存在するなど、問題が差し迫っていることを示唆する危険信号が出ているとの認識を示した。
シンクロニーのマックス・アクスラー最高信用責任者は、家計はおおむね健全だが、今後の負担増加に備えて支出を抑制していると指摘。大半の顧客はローンの返済を続けていると述べた。
アクスラー氏はロイターに「全ての所得層が以前に比べて支出に慎重になっており、業界全体で購入量が減少している」と語った。
ミシガン大学が発表した3月の消費者信頼感指数は約2年半ぶりの低水準。5年先の期待インフレ率は1993年以来の水準に上昇した。
一部のエコノミストはトランプ大統領の関税が物価上昇と景気抑制につながる恐れがあると予測。
ターゲットやウォルマートといった小売業者も、買い物客が支出に慎重になっており、安売りを待ったり、低価格品への切り替えを進めていると指摘している。
アナリストは、家計支出の削減がローンの延滞や債務不履行の増加の前兆になり得るとし、債務不履行率はおおむね安定しているものの、家計悪化の先行指標として支出の動向に注目しているという。
<金融機関に影響も>
消費者が借り入れに慎重になれば、融資が減り、銀行の収入を圧迫する恐れもある。HSBCのアナリスト、ソール・マルティネス氏によると、2月の融資の伸びは業界全体で前年比5─12%鈍化した。
同氏は「鈍化は明らかで、消費が脆弱であることを示している」とし「銀行は融資の伸びが鈍化すれば、純金利収入や収入が減少する可能性がある」と指摘した。
マルティネス氏によると、家計に対する懸念は消費者金融株の重しとなっており、アメリカン・エキスプレス、キャピタル・ワン、シンクロニー、ディスカバーの株価は過去1カ月間で15─22%下落している。
また、新型コロナウイルス流行時に猶予されていた学生ローンの返済が再開され、延滞が増加するリスクも指摘されている。