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「トランプ関税」、日本の自動車産業に影響 メキシコから対米輸出

2025年01月21日(火)14時24分

トランプ米大統領が20日の就任時に関税の検討を正式表明したメキシコは、日本の自動車メーカーが工場を構え、完成車の多くを米国へ輸出している。資料写真、米ニュージャージー州、2024年5月撮影(2025年 ロイター/Eduardo Munoz)

Daniel Leussink Kantaro Komiya Maki Shiraki

[東京 21日 ロイター] - トランプ米大統領が20日の就任時に関税の検討を正式表明したメキシコは、日本の自動車メーカーが工場を構え、完成車の多くを米国へ輸出している。実際に2月1日から25%の関税がかかれば影響は避けられそうになく、武藤容治経済産業相は21日の会見で「関税措置の内容を踏まえた上で、日本企業への影響を十分精査していく」と語った。

ホンダはメキシコに年間約20万台の生産能力を持ち、8割を米国へ輸出している。青山真二副社長は昨年11月の決算発表で、米国がメキシコからの輸入品に関税をかけた場合は「大きな影響がある」と語っていた。中長期的には米国内、あるいは関税対象外の国へ生産を移転する可能性にも言及した。

ホンダはカナダからも米国へ自動車を輸出。トランプ大統領は2月1日から同国からの輸入品も関税の対象にすることを検討している。

日産自動車とトヨタ自動車は、メキシコにそれぞれ2工場を構える。日産は対米輸出の割合を公表していないものの、2024年の1─9月に約50万5000台を生産した。トヨタは同期間にピックアップトラックを約17万5000台生産し、ほとんどを米国へ輸出した。

マツダは24年にメキシコで20万9303台を生産。6割を米国へ輸出した。同社広報はロイターの取材に「政策が出された後に内容を精査し、わが社のビジネスに与える具体的な影響を評価する」とコメントした。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が1月8─10日に在米の日系企業を対象に実施した調査によると、回答があった260社の半数近くがトランプ政権の関税政策の影響を受けると答えた。自由貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」のルールを無視して関税が課されれば「事実上、北米の自動車サプライチェーンは崩壊する」との声も寄せられた。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「トランプ政権の経済政策は、日本経済、日本企業にとっても大きな懸念材料」と話す。「日本の自動車産業は、メキシコやカナダの生産拠点を米国内に移すことも余儀なくされるだろう」とみる。

米国で生産した鉱山機械をカナダへ輸出しているコマツは、カナダが報復関税を課す可能性を懸念している。コマツの広報はロイターの取材に「カナダは最大の輸出先の一つ。部品の調達先の切り替えは対応できるが、製品の生産切り替えは、自動車などの産業と比べてボリュームが小さいため難しい」と回答した。

(Daniel Leussink、小宮貫太郎、白木真紀 取材協力:岡坂健太郎、清水律子)

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