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トランプ次期米政権の格付けへの影響、今夏までにより明確に=フィッチ幹部

2025年01月20日(月)12時39分

 格付け会社フィッチ・レーティングスでソブリン債格付け責任者に昨年指名されたジェームズ・ロングスドン氏はインタビューで、トランプ次期米大統領の政策が米国債の格付けに与える影響は今年夏の次回の格付け見直しまでにより明確になるとの見通しを示した。写真はフィッチのロゴ。ロンドンで2016年3月撮影(2025年 ロイター/Reinhard Krause)

Marc Jones

[ロンドン 17日 ロイター] - 格付け会社フィッチ・レーティングスでソブリン債格付け責任者に昨年指名されたジェームズ・ロングスドン氏はインタビューで、トランプ次期米大統領の政策が米国債の格付けに与える影響は今年夏の次回の格付け見直しまでにより明確になるとの見通しを示した。

ロングスドン氏は引き下げが危ぶまれる中国とフランスの国債格付けや、英国が財政難にどのように対応するのかも大きな焦点になると指摘した。

フィッチは2023年8月に米国債を格下げし、S&Pグローバル・レーティングに次いで米国債を最上位の「AAA」から「AAプラス」へ1段階引き下げた。ただ、格付け見通しは「安定的」としており、格付けが近いうちに変更される可能性は低い。

一方でトランプ氏が積極的な減税政策を推進し、輸入品の関税を引き上げて世界との貿易戦争を引き起こすと予想されており、債務は年間2兆ドルずつ増加して既に36兆ドル規模に膨らんでいることが多くの不安を生み出している。

ロングスドン氏は今年8月末までに予定されている米国債の次回格付け審査で「何らかの答えが得られると思う」と述べた。

「法案成立の過程がどのように進んでいるのかを見られるのは明らかだ」とし、輸入品への関税についてこう付け加えた。「非常に漸進的になるのか。それともそれほど漸進的にはならないのか。私には分からない」

フィッチは現在、輸入品の「関税率」(全ての商品が対象になるのではなく、既に関税がかけられている商品に対する関税)が中国に対しては60%、メキシコとカナダに対しては25%、他の国に対しては10%にそれぞれ引き上げられると想定している。

各国の格付けにはそれらの関税率を織り込んでいるため、全ての輸入品に関税をかけるといったより極端なことが実施されない限りは大きな変化は起きない見通しだ。

中国は既に格下げを警告されており、最も注目されるのは必至だ。

ロングスドン氏は「何が出てくるかと、(関税への)反応がどうなるかに注目したい」と言及。中国については関税と国内問題の両方に関するより多くの情報が必要だとしながらも、「不動産市場でごくわずかな回復」の兆しがあることはプラス材料だと指摘した。

<仏英の格付けは>

国債の格付けが「AAマイナス」のフランスと英国も、それぞれの国内問題を受けて注目されている。

フィッチは昨年10月にフランス国債の格付け見通しを「ネガティブ」へ引き下げ、歳出を抑制できないことが債務の対国内総生産(GDP)比は118.5%へ急速に押し上げていると警告した。

フランス政府は2025年の予算を決める必要があるが、野党議員を味方につけるため今月に歳出削減目標を320億ユーロ(329億4000万ドル)とし、従来計画の400億ユーロから引き下げた。

ロングスドン氏は「6月、7月に新たな選挙があるかもしれない」とし、格付けの決定がいつになるのは「言うのが難しい」と説明した。

それに比べると、英国はもう少し「余裕」がありそうだ。国債格付けの見通しは「安定的」だが、政府が財政目標を達成できない兆しが出ている中で疑念が高まっている。

格付け大手3社の中で先手を打つとの評価を得ているフィッチが、英国債の格付けを次回決めるのは2月28日だ。

ロングスドン氏は「私たちが注目するのは彼ら(英国政府)が財政目標を達成できないかどうか、そして達成できない場合にはどのように対処するかだ」と解説した。

また、全体的な格付けでフィッチが先手を打つとの評価を維持したいとして「結果的に正しい判断を下すのであれば、一番になりたいものだ」と語った。

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